70回目の鎮魂
2012年8月、米国からクリフトン・トルーマン・ダニエルさんが広島と長崎の平和式典に参加しました。ダニエルさんは、原爆の投下にサインをしたトルーマン米大統領の孫として生まれ、自分の子供が持っていた『Sadako and the Thousand Paper Cranes』という本を読んで、原爆の事実を知りました。佐々木禎子さんの兄雅弘さんから、禎子さんが折った鶴を渡されたことが、広島長崎を訪れるきっかけになったのです。 ダニエルさんの訪日には、大きな勇気と決断が必要だったと思います。原爆投下はアメリカにとっては正義、祖先や自国の教えに反すると考える人もいるからです。そんな不安をよそに、禎子さんの家族はダニエルさんに謝罪を求めませんでした。大切なのは、史実を自国の都合で解釈することではなく、真実を次の世代に伝えていくことです。禎子さんの本は70年経ってもそれを訴え続け、広島や長崎の方々は語り継ぐことをしてきました。ダニエルさんは、きのこ雲の下で起きた真実を、米国で伝え続けています。 2015年8月6日の広島カープの試合。広島の選手全員の背番号は86番となっていました。シンボルカラーの赤い帽子には白いハトが描かれ、胸にはGARPの代わりにPEACEと文字が刻まれていました。多くの日本人の方が8月に鎮魂の思いを巡らせる一方で、広島の小学生の約70%は原爆投下の日時を知らないというニュースが流れました。 2015年8月14日、新潟県長岡の花火「白菊」の大輪が、戦没者に手向けるようにハワイの空に打ち上げられました。長岡は真珠湾攻撃を指揮した山本五十六の出生地であり、原爆の模擬投下のあった場所でもありますが、現在長岡市とホノルル市は姉妹都市になっています。 平和とは人の痛みを理解することから始まります。戦争に正義はありません。あるのは、勝者と敗者。どちらにも被害者が存在します。その痛みを理解しようとすることが、次の世代への私たちの生きる姿勢になります。【朝倉巨瑞】
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