『国語』という名称を自国の教科の名称として使っている国は、日本以外では非常に少ないと以前聞いた覚えがある。日本で義務教育を受けた人なら、違和感なく日本語を学ぶ教科だと知っている。この教科で使う辞典も国語辞典で『日本語辞典』という名称のついたものは非常に少ない。『国語』という単語は和製漢語で明治時代に作られたとのことだ。文部省が決めた『国語』の教科には3種類の違った教科が含まれている。現代国語・古典・漢文で、中国語を基本とした漢文以外の二つがいわゆる日本語。 『国語』という単語を外国語に訳すと違和感を感じる。英語の場合national languageもしくはcountry‘s languageになるだろうか。結局のところ『日本語』の学習なのだが、教科の名称は『日本』語でなく『国』語だ。おもしろいのは 日本人が日本の義務教育で学ぶ場合は通常『国語』が使われ、日本国内を含み、外国人が学ぶ場合には『日本語』が使われる。思い返してみると、息子がロサンゼルスの日本語学校へ通っていたときの教科書の表紙には『日本語』と書かれていた。 国を意味する漢字にはもう一つ『邦』があり、『邦語』という言葉もあるが日常あまり使われない。教科の名称としても使われていない。新聞などは邦字紙と呼ばれるケースが多い。日本語新聞という表記も使われるが、ニュアンスが違ってくる。『邦題』は海外からの映画やドラマ、本など日本でつかわれる題名が原題と違う場合に呼ぶ名称だ。『邦』を使う場合にはただ単に国という意味だけでなく、『我が国』という意味が強調されているように感じる。 冒頭にあげた『国語』だが、イギリスの公用語、国語は英語。つまりイングリッシュ。アメリカやオーストラリアなど、国が変わっても『英(イギリス)語』だ。スペイン語も同様で中南米など多数の国で公用語として使われているが、どの国でも名称はスペイン語。 日本人が海外で活躍し、日本の文化が世界中に広まっている今日、国家主義もかんじさせる教科の名称を『国語』から『日本語』に変更してはどうだろう。【清水一路】
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