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Writer's pictureRafu Shimpo

年の瀬

 「年の瀬」も押し詰まってきた。といっても、アメリカに移り住み、年月がたつと、あの日本独特の「年の瀬」の感覚が薄れていく。  クリスマスが終わるやいなや、日本はまるで歌舞伎の早替わりのように「年の瀬」一色になる。門松やしめ飾りを捌(さば)く鳶(とび)職人の威勢のいい売り声。人が群がる商店街の福引抽選器の「ガラガラ」の音。そして除夜の鐘の音(ね)。  「大辞林」によれば、「年の瀬」の「瀬」は「川の水が浅く、流れの速いところ」の意。そこから一年で一番、時の流れが速いと感じる年末をこう呼ぶようになったという。  江戸時代、庶民は掛けで物を売買していた。今でいうクレジットだ。そこで商い人(あきんど)は年末にその代金の取り立てに奔走した。「掛取り」(借金とり)が駆けずり回る歳暮の慌ただしさ。取り立てるほうにとっては「大晦日」まで時間との競争だ。  「年の瀬」の由来には、そのほか、「年が果てる=年果つ(としはつ)」が変化したという説や「四季の果てる月=四極(しはつ)」、「一年の最後になし終える=為果つ(しはつ)」から来たという説もあるようだ。  年末、走り回るのは「掛取り」だけではない。  12月は陰暦名称で「師走」という。1月は「睦月(むつき)」、2月は「如月(きさらぎ)」と、11月の「霜月(しもつき)」まで月の字がつく。月がないのは3月(弥生=やよい)と12月の「師走」だけだ。  平安時代頃から、陰暦の12月は師匠の僧がお経をあげるために東西を馳せる月だったという。そこで「師馳す」(しわす)と呼ぶようになり、その後、「師走」と書くようになったらしい。(「語源由来辞典」)  「大晦日」は今年もタイムズスクエアの「ニューイヤーズ・イブ」TV中継を見ながら、家族と少し高いワインか、安いシャンパンで乾杯するつもりだ。が、今年は、そのあと、一人、熱燗をちびりちびり舐めながら三遊亭圓楽(五代目)師匠のCDでも聴きたくなった。  落語で「年の瀬」の定番といえば、やはり、「掛取り」だ。【高濱 賛】

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