数の効用
最近、万歩計を購入、毎日ポケットに入れて持ち歩いている。3つの表示があり、今日の歩数、過去7日間の歩数記録、1万歩以上のベストスリーが表示される。膝のリハビリに毎日の散歩を心がけているが、雨が降ったり寒かったり、緊急の仕事があったりでついサボりがち。ところが万歩計を持ち歩くと、もう少しで5千歩に達する、今日は8千歩を超えた、なんとかベストスリーの記録に残る1万歩を超えたいと励みが出る。 そういえば以前の職場でメキシコ工場の建設を前に、倉庫内にテストの組み立てラインを設置して製造を試みた。同じ設備・工程で臨むのだが、どう叱咤激励しても日本のような実績が上がらない。散々悩んだ工場長は一計を案じ、ラインの末端に電光表示板を取り付けた。二つの表示が並び、標準工数により時間の経過とともに生産されるべき数字と、完成ごとの生産実績数が示される。 なんと結果は、どうしても1日当たりの生産数が450個くらいだったのが、700個を超え800個に迫り、標準工数の850個を超えるまでになってきた。「いったい俺が今まで苦労したのは何だったんだ?」と工場長がぼやく。そうだ! 人間は具体的な目標数値を認識すると数字と競争するのだ。表示板を目にしたラインのメンバーは、具体的な目標と達成過程が明確になり、各人が努力と工夫をこらしたのである。 人間は比較することでものを認識する。人と動物の最大の違いは言葉や文字を使うことにある。言葉は、感情や意思や考えを伝える手段のみならず、感覚を超えた形而上の概念や理念などを生み出し、思考力は飛躍的に発達した。そしてそれらは文字によって地域や時間を超えて伝わった。 なかでも数字は、重さや時間・距離や面積の単位が確立され、具体的にものを表す最良の手段となった。画期的な「ゼロの発見」もあり、数の計算方法が発達して各種の科学技術が進歩した。 それだけではない。前記のように数字の効用は、人々に「目標を明確に示す」ことによってモチベーションを高め能力を発揮するという大切な一面もあるのである。【若尾龍彦】
Recent Posts
See Allこの4月、日本を旅行中に東京から新幹線で45分の静岡県熱海で温泉に浸かり、翌日、山の上の美術館で北斎・広重展を開催中と聞き、これはぜひと訪れてこの美術館の素晴らしさに驚き魅せられた。その名はMOA美術館(以下モア)。日本でも欧米でもたくさんの美術館を見たがこれは...
ヘンリー王子とメーガン・マークルさんの結婚式が華やかに執り行われた。米メディアも大々的に報道した。 花嫁がアメリカ人であるということもあってのことだが、それにしてもアメリカ人の英王室に対する関心は異常としか言いようがない。 ...
目覚める前のおぼろな意識の中で、鳥の鳴き声が聞こえた。聞き覚えがない心地よい響きに、そのまま床の中でしばらく聴き入っていた。そうだ…Audubonの掛け時計を鳴かせよう… Audubonは、全米オーデュボン協会(1905年設立)のことで、鳥類の保護を主目的とする自然保護...
Commenti