SoCalGasと加州当局:ガス漏れ停止を発表
ポーターランチの住宅地から見えるSoCalGasのガス貯蔵井戸
ロサンゼルス北部ポーターランチのSoCalGas社の天然ガス貯蔵施設で昨年10月23日からおよそ4カ月近くにわたり続いていたガス漏出事故で18日、同社と石油や天然ガスなどのエネルギー資源の安全性を取り締まる加州機関「Division of Oil, Gas and Geothermal Resources(DOGGR)」はガス漏れが発生していたガス井は完全に封じられたと発表した。【吉田純子、写真も】
カリフォルニア州の自然保護を司る加州保存局によると、DOGGRは17日夜に漏出が発生していたガス井(SS25)が封じられたことを確認。ガス井はセメントを注入して塞がれ、5回にわたり完全に封じられたか検査が行われたという。
ガス会社は昨年12月4日から問題のガス井を塞ぐための新しい井戸の掘削を行っていた。ガス会社によると11日にこの井戸が問題のガス井(SS25)に到達し、ポンプでセメントを流し込み、漏出が止まったという。
メタンガスは肉眼では確認できないため、加州当局は赤外線カメラを使用して施設周辺を撮影。問題のガス井からはメタンガスの漏出は確認されなかったという。
漏出が停止したことでガス会社は今後、新たに天然ガスを貯蔵する前に、施設内すべてのガス井の安全性を調査しなければならない。
環境防衛基金(EDF)によるとこれまでにカリフォルニア州が1日に排出するおよそ4分の1に相当する推定9万6千トンのメタンガスが大気中に放出され、米史上最悪の環境災害となった。
漏出事故を起こしたガス井(SS25 )のイラスト。パイプの周りにコーティングされているコンクリート製のケーシングは2重構造になっており、外側部分は地下990フィート地点で終わっている。パイプは地下500フィート地点で破損し、外側ケーシング終了部分からガスが地上に漏出したとみられている(PorterRanchLawsuits提供)
サンタ・スサナ・マウンテンに広がる3600エーカーの同敷地内には115基のガス貯蔵用井戸があり、およそ860億立方フィートの天然ガスが貯蔵され、南加地区の約2200万人に供給されている。漏出事故はそのうちのひとつで発生した。 同施設はもともと石油採掘施設として利用されていたが油田が枯渇し、1970年代にSoCalGasが買い取り、油井をガス貯蔵用井戸として活用していた。 問題のガス井(SS25)は1953年に作られ、当時は安全弁が設置されていたがガス会社がガス井として活用しはじめた1979年に安全弁は取り外され、その後も新しい安全弁が取り付けられることはなかったという。 遠くはカナダからパイプラインで運ばれてくる天然ガスは供給されるまでおよそ8500フィート(約2600メートル)地下で貯蔵されており、地上と地下貯蔵部分には直径約7インチ(18センチ)のパイプが通っている。パイプの周りにはガス漏れを防ぐためコンクリートでパイプの周りを固めるケーシングと呼ばれる措置がとられており、この厚さが約11インチ(約28センチ)。しかし地下990フィート(約300メートル)までしか施されていない。ガス漏れは地下約500フィート(約152メートル)の地点でパイプが損傷し、ケーシング終了部分から漏出したとみられている。漏出事故の原因として老朽化と安全性の不備などが指摘されている。 事故発生後、住民からは鼻血や頭痛、喉の痛みなどの健康被害が報告され、施設近くの学校に通う生徒は現在他校で授業を受けている。 また4645世帯が自宅を離れ転居先で避難生活を送っている。費用はガス会社が負担しており、漏出停止が正式に発表されたことで、ガス会社側の転居アシスタントは、ホテルに転居した住民は25日で、レントハウスの場合は契約期間終了と同時に打ち切られる予定となっている。
ポーターランチ日系住民の声
1月16日からホテル住まいをしているポーターランチの住民で匿名希望の日系人Aさんは25日までにホテルを出て帰宅する予定となっている。「そのうち空気もきれいになってくれると思います。特に心配はしていません」と話す。 一方、同じく住民の山口弘・淑子夫妻は「施設内には老朽化したガス井が多数あるので、そのすべてを検査し安全性が確認されてからでなければ自宅に帰るのは不安です。またいつ同じような事故が起こるか分かりません」と話す。 ガス会社は事故後、住民に空気清浄機を無料で提供していたが、山口さん宅に取り付けられたのは漏出停止の発表があった18日。「順番待ちで昨日やっと取り付けられましたが正直いまさらといった心境です。漏出事故が発生した当初からガス会社は問題ないと住民側に言っていたくらいですから、対応に信頼が持てないのです」と心境を明かした。
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