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Writer's pictureRafu Shimpo

「冗談じゃないよ」

 心のどこかにこだわるものがあり、落ち着かない。何が理由だろうと考えていて、ふと思い当たったのが今朝の出来事。  「これ、A君が翻訳したイベントの案内だけど、目を通しますか」  同僚のJさんが4ページほどのドキュメントを手渡しに来た。軽い気持ちで読み下していくうちにまず、こなれていない日本語が気になり始めた。  書き言葉と話し言葉が統一されておらず、「です、ます」と「だ、である」もまざっている。突然「でございます」が入ってくることもある。軽く目を通すだけのつもりが 赤ペンを手に校正を始めてしまった。「それ」がやたら出てくるのは英語の「it」がひんぱんに出てくるからだろう。共催団体の名前も一つ落ちている。  翻訳を頼んだ担当者に、この日本文は何に使うつもりなのかとたずねたところ、「ウェブサイト(電子)ニュース用で、日本語もあったほうがいいだろうということで、もう流してしまったけど…」という返事。  同じ校正をするならリリースする前に見せてほしかった、と軽く抗議したところ、 「何が問題なの? そのまま流したからってどうってことないだろう。校正なんか見ていて遅くなるより、ニュースが早く届くほうがいいじゃないか。日本語でもリリースしているというところが大事なんだ」  一瞬、聞き間違ったかと驚いた。文章の校正ができるほどではないが、日本語がそこそこ分かり、仕事の合間に某有名大学で博士コースをとっている知識階級の彼の言葉とも思えない。やはり彼もアメリカ人だったのだ。  多少間違っていても日本語でニュースを出している努力こそ認められるべきだと彼は言うのだ。日本語をその程度に扱われたことが非常に不愉快である。  このままインフォメーションが流れたからといって、大きな問題になるとは私も思わない。しかし日本語は私の言葉であり、大切にしているつもりだし、他の人にもそれなりに尊重してもらいたい。日本語の分かる人が読めば、ひと目でおかしいことがわかるだろう。日系団体だから仕方ないなどと妥協してもらっては困る。  「冗談じゃないよ!」  悪態をついて私の一日が終わった。【川口加代子】

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