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Writer's pictureRafu Shimpo

「美白」至上主義

 久しぶりに東京の美容院に行ったらこう言われた。「日焼けしていますね。こんなヘアカラーにすると顔が『美白』に見えておススメですよ」と。  一瞬目が点になりながらも、あえて議論を避け「お任せします」とだけ答えた。しかし心の中はざわついていた。  黒人やラティーノ、東南アジア出身の人たちが来店したらどう接客するのだろう。日本人以外、特に欧米出身者にその発言をしたら、おそらくアウトだ。  子供の頃も、社会人になってからも活動はおもに屋外。ハワイとロサンゼルスでたくさんの日差しを浴びてきた肌は、いまでもこんがり小麦色。美白には縁もゆかりもない。ハワイでは、日本人観光客が肌のほぼ全部を隠して歩く姿に驚いた。せっかくやって来た南の島で太陽も浴びずに何をするのか、理解不能だった。  美白、ビハク、Bihaku…。女性たちは日焼けをしないようあれこれ手をつくす。化粧品に日傘、帽子、そしてサングラス、二の腕から手首までをすっぽり隠すアイテムなどなど。  しかし、化粧品業界で美白とは「メラニンの生成を抑え、シミ、そばかすを防ぐ」または「日焼けによるシミ、そばかすを防ぐ」という表現に限られていて、肌本来の色を白くすることを謳うのは、厚生労働省の決まりで許されていないらしい。  美白化粧品を買ったら肌が白くなると勘違いしている人は多いのではないか。少なくとも私はそうだ。そういう医学的な意味合いではなく、単に白いことが美しい、今よりも白くなりたいと思っている人が少なからずいるのは事実である。最近では証明写真機にすら美白加工の機能がついているし、スマホのアプリでも白い肌を簡単にゲットできる。  ことわざの「色白は七難隠す」は「容姿に多少欠点がある女性も色白ならばそれを補って美しく見える」という意味。 その美白信仰は、現代の日本でも健在。京都の舞妓さんも歌舞伎の女形もおしろいで顔を白くして〈美しく〉見せる。日本人が白人好きなのも関係あるかもしれない。  この「美白至上主義」も突き詰めれば今はやりの「白人至上主義」と同じ流れではないだろうか。美白を追い求める日本人女性たちは、その言葉や概念のウラの顔を知る由もなく、美白を手に入れるべく日々猛進しているように見える。【中西奈緒】

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