「軍師」と「親衛隊」
今、ユーチューブの「三国志」にはまっている。軍師が劉備や曹操、呂布にとっていかに重要か、見ていてよく分かる。 安倍首相の側近の発言が安保法制関連法案の新たな火種になっている。三国志の時代ならさしずめ「軍師」に当たる首相補佐官の「法的安定性」発言だ。安倍内閣はこれまで行使できないとされてきた集団的自衛権を使えると憲法解釈を変えた。野党や憲法学者たちは「憲法違反だ」と追及。首相は過去の最高裁判決や内閣見解に照らして、「法的安定性は保たれている」と説明している。 ところが首相補佐官が、講演で「法的安定性など関係ない。国を守るために必要な措置はなにかを基準にしなければならない」と発言。野党は補佐官の辞任を強く要求している。この補佐官に限らず、首相の「親衛隊」たちの確信犯的放言が目立っている。 数週間前、自民党本部で開かれた会合で、「マスコミを懲らしめるためには広告料収入がなくなるのが一番」「マスコミを叩くうえでテレビのスポンサーにならないのが一番」「沖縄の世論はゆがみ、左翼勢力に完全に乗っ取られている」と言いたい放題。 「親衛隊」の一人は、他の会合では「沖縄の基地反対運動の背後には某国の工作員が蠢(うごめ)いている」とまで言い放っている。 沖縄県は日米両政府の普天間基地の辺野古への移転決定に真っ向から反対、日米合意は19年間宙に浮いたままだ。基地再編がいつまでも進まないのを一番喜んでいるのはどこの国だろう。 先の知事選で翁長雄志・現知事を支援したのは、確かに沖縄の非自民党勢力だ。だが、「その背後で某国の工作員が蠢いている」という「事実」は聞き捨てならない。事実だとしたら日米両政府も手を拱(こまね)いているわけにはいかない。名指しされた某国も黙殺するわけにはいかないはずだ。 先進民主主義国では、自分の信ずるところを自由に発言することは憲法上許されている。だが、発言にはつねに説明責任が伴う。ここはひとつ、陳謝させるだけではなく、マスコミは事実関係を徹底調査してみてはどうだろう。 【高濱賛】
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