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Writer's pictureRafu Shimpo

「Oh Lucy!」全米公開:寺島しのぶさん主演:日本公開へ向け、弾みをつける

「Oh Lucy!」上映後、Q&Aを受ける寺島さん(右)と平栁監督=WLAの劇場

 平栁(ひらやなぎ)敦子監督の初長編作品「Oh Lucy!」が、映画リビューサイト「ロッテントマト」で好成績を残している。ハリウッドのトップ批評家を含む43人からの高評価を受け、信頼性の高い作品とされる「Certified Fresh」を獲得。同サイトの観客による平均評価も5段階中4・2を示し、「好きな作品」と表した人が9割近くに上った。カンヌ映画祭からインディペンデントスピリット賞へと引き続き注目を浴びる「Oh Lucy!」は、4月28日の日本公開へ向けて大きく弾みをつけた形だ。【麻生美重】

 世界中から応募された脚本より選ばれる「サンダンスインスティテュート・NHK賞」を2016年に受賞し、平栁監督の長編一作目として製作された「Oh Lucy!」。この作品は2017年のカンヌ国際映画祭で批評家週間に正式招待されるという日本人監督作品としては10年ぶりの快挙を成し遂げた。  このほど、制作費2千万ドル以下の作品を対象に選ばれるインディペンデントスピリット賞の主演女優賞で、寺島しのぶさんが6人の候補者の1人に選ばれた。サンタモニカで行われた授賞式では惜しくも賞を逃したが、寺島さんの演技に対する評価は高く、受賞したオスカー女優のフランシス・マクドーマンドからも寺島さんに賛辞が贈られたという。  授賞式の前日午後にロサンゼルス入りし、上映会後の舞台あいさつへ向かうため準備をしていた寺島さんに話を聞いた。

監督の意気込み伝わる

 出演を決めた理由の一つは脚本だったという。まず話を読んで興味がわいた。次に監督の平栁さんに直接会い、彼女の圧倒的なパワーと作品にかける意気込みが伝わったことが決め手となった。「監督は太陽のような人。とてもエネルギッシュで野心家。この人についていけば大丈夫と思わせる」  寺島さんと平栁監督は互いに同じ年齢の男児を持つ母親で、性格的に近いところもあるという。「監督とはお酒を飲みながらずっと話ができる。家族に支えられながら映画を作っている姿にも好感が持てた」  「Oh Lucy!」のような低予算の映画は、やりたいことを全てやり遂げるのが困難な時がある。制限も多く、厳しい選択を迫られることも。「それでも監督には決してめげない気力と体力があった」寺島さんはこう振り返り、平栁監督との結びつきが自身のやる気にも影響したことを強調した。

役柄へのアプローチ

 主人公の節子は東京で平凡な生活を続けるOL。姪の美花(忽那汐里)に頼まれ風変わりな英会話学校で体験クラスを受けることに。ジョシュ・ハートネット扮するアメリカ人講師のジョン、クラスメートのトム(役所広司)に出会い、節子の生活は一変する。  やや特徴的な節子という役柄。寺島さんのアプローチはどういうものだっただろう。「節子と重なる部分はほとんどないが、ちょっとした自分だけの楽しみを見つけてほくそ笑むようなところは似ている。ここ、誰にもわかってもらわなくていいけど私はわかってる、というように。自分をいたわってあげるところも似ているかもしれない」  自身と共通点のほとんどない役柄を、魂のこもった人物として作り上げる。その手法を語る中で寺島さんは、節子のキャラクターを緻密に分析しこう表現した。「節子は視野がとても狭い。誰にも迷惑はかけないけど、意外と外に害を飛ばす。チェーンスモーカーで、たぶん肺が悪い。胸が縮こまってて横から見たらCの字みたいになってる。そうすると骨盤が開いてO脚になる」  キャラクターを理解し、自分の中でしっくりきて初めて歩き方が決まるという。 寺島さんいわく「とりあえず歩くだけのシーンは、意外と難しい」。丁寧に役を作り上げ、演技に本気で向き合うからこそ、素人には想像しにくいこうした感覚を招くのかもしれない。  日本と南カルフォルニアの両方で展開するストーリーの中で、海外へ出た節子の表情や行動には変化が見て取れる。「このカラッと乾燥した気候から得る開放感がキャラクターに影響しました。表情が明るくなるし、好奇心が強くなり思い切った行動に出る」作品中盤に繰り広げられるロードムービー的流れの中で、節子は自身の思いに忠実に行動する。寺島さんはそんな節子の切羽詰まった心理を包み隠さず表現し、やがてやってくる意外なクライマックスへと観客を導くことに成功している。

インディペンデントスピリット賞の会場へ向かう寺島さん=サンタモニカ

 カンヌ映画祭、インディペンデントスピリット賞ノミネートと全米公開。日本公開へ向けての期待は高まる。「これだけの評価をしてもらえたら、撮影がどんなに大変だったとしても、やって良かったと心から思える」  19年2月にはパリの国立コリーヌ劇場で、演出家の故蜷川幸雄(享年80)の舞台「海辺のカフカ」(村上春樹原作)を演じる。「パリのオーディエンスの前で生身の自分を見せる。それがひとつの楽しみ」  カリフォルニアでの撮影には息子も同行させたという。仕事で家を離れることが長期におよび、寂しい思いをさせたと感じたからだ。「自分にとって大切なのは、仕事を持ちながらも母親としてどうあるか。できないことはできなくても良い。こういうことを語り合える平栁監督との交流はこれからも続くと思う」

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