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Writer's pictureRafu Shimpo

うまい棒がつなぐ幸せ

 ゴールデンウィークに車で遠出をした。大人の遠足。もちろんおやつ持参。「300円以内」の制限はないけれど、つい手に取ってしまうのはあの1本10円の駄菓子。子供の頃からの定番で、いまや20種類くらいの味がある。  1979年に発売された「うまい棒」。ハワイやロサンゼルスの日系スーパーにも売っていた。値段は日本の倍くらいしたけれど時々買っていたのを覚えている。ソウルフードならぬソウル菓子。日系人でも知らない人はいないだろうし、今やアジアにも販路を拡大している。  そんな愛すべき「うまい棒」にまつわる記事を読んだ。短いコラム調で読み終えて心がホッと温まった。ここ日系社会の友人たちにも共有したくていま英字版に取り掛かっている。  話はこうだ。鉄道会社に勤める男性(41)が東京都墨田区の魅力をPRする「つながる」をテーマとした動画コンテストで優勝。副賞として区にゆかりのある4つの賞品の中から「うまい棒一〇〇〇〇本」を選んだ。職場の同僚と分け合うつもりだったが、同じく作品を出していた区内の小学校にそのすべてをプレゼントすることにした。  何度も練習したスピーチを全校児童の前でして、うまい棒がぎっしり詰まって積み上げられた17箱の段ボールを披露。子どもたちの笑顔と大きな歓声が広がったという。  男性は「照れくさかったけれど、グランプリだと知らされたときより、幸せになれた」という。その記事のタイトルは「うまい棒1万本分の幸せ」。1本10円のお菓子が大人も子供もハッピーにした。  自分の幸せは人の幸せとつながることで、より大きくかみしめることができることがある。自分のためより、誰かのためだと思うとやる気が出ることもある。この男性の決断から、このうまい棒は人と人をつなぎ、幸せを運び、幸せを分かち合う懸け橋となった。  ちなみにこのうまい棒、2年生の算数の授業で1万という数字を実感してもらう教材としても使われ、大活躍したそうだ。もらって、食べて、しかも学べる、まさに「一本で何度もおいしい」スーパースナックだともいえそうだ。【中西奈緒】

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