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Writer's pictureRafu Shimpo

お米一粒の命

 子どものころ、ご飯粒を茶碗に残したまま「ごちそうさま」と言うと、「一粒も残さず食べなさい」と叱られたものだ。  また、食べる時に「いただきます」と食前のあいさつをして、食事に携わってくれたすべての人々に感謝の心を表し、さらに、米も魚も肉も野菜も、すべてかけがえのない「命」であり、「○○の命を私の命にさせていただきます」と、それぞれの食材に感謝する気持ちを表すのが「いただきます」の本意だと、子どものころに教わる。  一方で、ドライにわりきった思考法の人が増えた現在、お金を払っているのだからレストランでは「いただきます」と言う必要はないと思っている人がこのごろは増えているそうだ。  言う、言わないは本人の勝手だが、ちゃんと「いただきます」と言ってから箸を持つ若い人を見かけると、家庭でのしつけが行き届いて大切に育てられたのだなあ、と他人事ながら安心し、食事も美味しく感じて、会話も弾む。  食べ放題のブランチやバッフェでは、皿いっぱいに食べ物を大盛りにして、結局は食べきれずに残したまま帰る人をよく見かける。食べ残しはすべて捨てられて無駄になる。その量は、年間にすると想像を絶する膨大な量に達している。  国連の食料農業機関(FAO)によると、世界中で約8億人が飢餓に苦しんでいるという。9人に1人が栄養不良の状態。一人当たりの1日に最低限必要な穀物(小麦、大麦、トウモロコシ、米、オート麦、ライ麦など)の量は457グラム(年間167キロ)とされているが、世界183カ国の穀物生産量(2013年調べ)は27億7994万トンだから、計算上は全人口約72億人を賄えるだけの穀物が地球上にはある。  問題は、その配分が適切に行われているかどうかだが、見落とせないのが家庭やレストランで廃棄される食品の膨大さ。  先日、日本で発覚したビーフカツなど6万枚に及ぶ廃棄食品の横流しは問題外だが、極力、無駄をなくして「もったいない」という日本の文化、日本人の心が、「いただきます」という精神とともに世界に広まったら、お米一粒の命は人の命にしっかりと受け継がれていくはずだ。【石原 嵩】

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