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Writer's pictureRafu Shimpo

きもいりどん

 日本の9月は、敬老の日を含む連休が、春のゴールデンウィークに対して秋のシルバーウィークという名称で呼ばれるようになりましたが、シニアを敬うための休日というより、シニアからいかに多くの散財をさせようとの意図が悲しいほどの時期でもあります。アメリカでも9月にはグランド・ペアレンツ・デー(祖父母の日)がありますし、中国でも9月は老年令(高齢者の日)が定められています。東アジアで伝統的に祝う五節句のひとつである9月の重陽(ちょうよう)の時期には、長寿を願ってお祭りをする慣習があります。国や人種に関わらず、シニアを敬い、長寿を願おうとする思いには共通のものがあります。  私の住むオレンジ・カウンティーでもこの時期には、「敬老感謝の集い」が行われています。80歳以上のシニアの方々を招待して表彰し、日本の文化芸能や歌などが披露され、お弁当を食べる会が30年以上前から継承されています。毎年出席するシニアの方々は、この時に集まる久しぶりの顔ぶれとの積もる話に、花が咲きます。旧知の友人や知り合いが会って元気を確かめ合うこのイベントでの笑顔や笑い声は、毎年ボランティアをしている者にとっての最大の報酬です。ここにはシニアの方々に寄り添い、おせっかいをする姿が生きています。  さて、昔からの九州の言葉に、「きもいりどん」という表現があります。これは「肝入り」(人に対して気持ちが入っている人)、つまり世話好きな人や、おせっかいな人という意味があるそうです。とかく自分だけの利益や幸福にフォーカスを合わせようとする個人主義の台頭は、家族や地域コミュニティーが寄り添って生きてきた歴史を、昔のしきたりとして追いやってしまう傾向にあります。  そのような中で、私たちは「きもいりどん」になることが求められているのではないでしょうか。人と人とをつなぎ、おせっかいをし、常に寄り添っていくような「きもいりどん」の存在があることが、無用な諍いをなくし、社会を希望があるものに変えていくのではないでしょうか。いずれ消えゆくかもしれない何気ない方言に、大切なことを教えてもらいました。【朝倉巨瑞】

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