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Writer's pictureRafu Shimpo

くもり、のち晴れ

 空はどんより曇り空。しかも寒いし、雨も雪も降る。太陽はなかなか昇らないのに、あっという間にいなくなる。気分が沈むのは天気のせいかなと思いつつ、それが言い訳であるというのも分かっている。  休みをもらってドイツの首都ベルリンへ。「東」の風情を味わってみたくて旧東ベルリンを中心に散策した。時計台、テレビ塔、そして年季の入った街の雰囲気。ドイツ統一から30年近くにもなるのに20世紀で時が止まったかのよう。かろうじて、広場のクリスマスマーケットだけが街に明るさを与えていた。  中心部の一等地にはホロコーストの慰霊碑。ベルリン北部にはザクセンハウゼン強制収容所。ナチスドイツがユダヤ人を収容していた大規模な施設がそのまま生々しく残る。重苦しい空気にだんだんと気分が滅入っていく。  逃げ込むかのように旧西ベルリン地区に入ると、馴染みのある看板やブランド店の明るいショーウィンドウが温かく迎えてくれた。日頃、資本主義にどっぷりと浸かって生活しているんだとあらためて実感。  第二次世界大戦が終わって72年、東西冷戦の終結から30年。EUを牽引するドイツ。古びた街並みは経済的な問題で開発が遅れているからなのかもしれない。しかし博物館や記念碑、収容所、ベルリンの壁など負の遺産は、あえて目につくところに多く残されている。過去に背を向けず、むしろ正面から向き合って暮らすドイツ国民の覚悟みたいなものを感じる。  今は日本に帰る途中の北欧フィンランドのヘルシンキ。天気はベルリンと同じくどんより。いや、もっと寒いし日も短い。それでも私の気分は明るい。  街中もホテルの部屋も色彩豊かな北欧デザインの雑貨に溢れて、ほっこり温かい気持ちにさせてくれる。なんて短絡的なんだと自分を責めつつ、いまやっとベルリンで味わった感情の揺さぶりを振り返ることができる。  突きつけられた負の遺産から目を背けず直視していこう。ただ、いま目の前にはお気に入りのフィンランドの国民ブランド「Marimekko」が。私を確実に晴れやかにしてくれる。さあ何を買って帰ろうか。【中西奈緒】

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