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Writer's pictureRafu Shimpo

ねむの木学園のこどもたちとまり子美術展

 ねむの木学園の子供たちの絵は、不思議な絵です。絵の技法を持っているわけでもない、形もまちまち、線も真っ直ぐでない…なのに子供たちの絵のこの迫力、この力強さはどこから来るのでしょう。  強い意思表示、思わず心和む絵、じっくりと時間をかけ丹念に仕上げた絵、普通の人には描けません。花も木も蝶々も小さな小さな同じパターンが数限りなく並びます。しかし微妙に異なった色を配したパターン群は素晴らしい迫力となって見る人の胸に迫ります。3年間かかった絵もありました。その根気に脱帽です。  ユニークな絵、単純なのに惹きこまれるデザインと色遣い、計算でなく感性の赴くままに描かれた絵・絵・絵に圧倒されました。学園では勉強だけでなく、美術、音楽、茶道なども本格的に学びます。子供たちの絵は「障害者の絵」ではなくその純粋さ、ひたむきさによって世界の人々の心を捉えました。それは教えるのではなく、どの子供にも備わっている可能性を自発的に花開かせるじつに根気よい対応から生まれるようです。  ねむの木学園は1968年、女優・宮城まり子が設立した肢体不自由児のための療護施設。その後、子供たちのための学校(ねむの木養護学校)、大人になった子供たちのための身体障害者療護施設(ねむの木・のどかな家)などを作りました。入所してくる子供たちは、違った環境に戸惑い、泣きわめき、蹴っ飛ばし、噛みつき抵抗します。そんな子供たちに、身をもって全力で立ち向かい、戦い、大きな愛で包み込み、やがて子供たちはそんなまり子さんを、すべての自分を受け入れ包み込んでくれる唯一の存在である「おかあさん」と呼ぶようになるのです。  まり子先生はすでに89歳、展覧会場の売店で毎日自ら広告塔となって画集にサインをしています。来場者への感謝と、ねむの木学園の運営費を賄うためです。なんとか恒常的に運営費をまかなう収益構造を作らなければ、この世界に誇れるユニークな学園が日本から消えて無くなりますね。サインをして落款を押し希望があれば写真に納まってくれる。神様のようなまり子さん。ご健康を願わずにはいられません。【若尾龍彦】

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