よりどころに寄り添う
中学・高校の修学旅行では、必ず寺社見学が入っている。もちろん、その歴史や開祖などの説明はあったが、興味がないので頭に入るわけもなく、ただ行っただけで終わった。それが、年を重ねて、人のご縁をいただいているうちに、お参りしたい気持ちが起こり、寺の宗旨や宗祖を知りたいと思うようになると、人とのつながりも少し変わってくる。 「お大師様が『何も気にかけることはないよ』と言ってくれるので、こうやって寝ていられる」と、話したのは食事を摂らなくなって2カ月以上、リンゴジュースだけ飲んでいる97歳の女性。休んだり、少し疲れたくらいで寝るのはよくないことだと古い日本で考えられていたこと。休みたいとか考えず、ずっと何かをし続けていなければと思って生きてきたのだと思う。 それが、だんだん目がよく見えにくくなって文字を書いたり読んだり作ったりが難しくなる。膝が痛い、足がむくむなど、弱ってきて歩くのも大変になってきていた。 そんな彼女のよりどころが、お大師様。そのお大師様が、前述の彼女の言葉にある「何も気にかけることはないよ」と語りかけてくれた。 だから、彼女は無理せずゆっくり寝ていられるし、食べられないのに無理強いされることなく、ほしい時にリンゴジュースを飲んでいる。 彼女は、一人で一軒家に住んでいた。身の回りのことができなくなって、敬老の施設に入った。医者にかかることもなかった彼女は、そこでだんだん増える薬の量を気にしていた。それも、最低のレベルにしてもらった。 毎月ある仏教の時間が彼女の楽しみだった。それにも出席する元気はなくなってきたが、お大師様とは寝ながら話をしているのだろう。訪問した時も、お大師様のことを話題にすると、よく話す。日本語の仏教の時間がある敬老のプログラムはどんなに慰めになったことか。敬愛になったというが、正式な文書はもらっていないので、敬老と記している。 日本語を話さない介護スタッフも、お大師様のことを話したら、理解してくれた。ありがたいことだと、感謝した。関わる相手のよりどころを理解できると、ちょっと会話がふくらむ。【大石克子】
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