オレンジ郡協会が月見の茶会:秋の一服と点心を堪能
日本庭園で行われた立礼席で、正客の米国書道研究会会長の生田愽子さんにお茶を出すステファニー・ワトソンさん(中央)。右奥は、亭主のポール・ニューカムさん
茶道裏千家淡交会オレンジ・カウンティー協会(半田俊夫会長)は、恒例の「月見の茶会」を9月26日、オレンジ郡ビラパークの小泉宗由・相談役宅で催した。表千家、裏千家、小笠原煎茶道などの茶人はもとより、書家、日本舞踏家など文化人ほか、多方面から85人が参集し、月を愛でながら、秋の一服と点心を堪能した。
浮かび上がった大きくてきれいな月
茶会は「泉由庵」の座敷で本席を、日本庭園では立礼席と点心席を設け、小泉一門から全5社中が、招待客をもてなした。
小泉宗由社中が点前を披露した本席では、「秋」と「月見」の演出が光った。床の間には、白隠が描いた、僧侶が月見をしている「坊ノ画」に、「江上…(水面に月が浮かんでいる)」という漢詩が書かれた「布袋画賛」が掛けられ、風炉先は古木で作られた「月に兎」、水指はまゆ形の「萩」。主菓子は、ちからもち製の「薄紅葉」、他のお菓子はもみじ、すすき、稲穂、かかしなどと、趣向を凝らした。
野点席には、ススキと萩、そして月見まんじゅうが飾られ、コオロギの鳴き声が響き、秋の風情が庭いっぱいに漂った。日が落ちて暗くなると、いよいよ茶会と並ぶ「主役」の登場だ。この日は「中秋の名月」の前夜で、ほぼまん丸い月が澄み切った夜空に浮かび上がると「まあ、きれいなお月さま」などと、感嘆の声が聞かれ、写真に収める人が多く見られた。
点前を披露したのは、野本宗智社中。野本師と門弟12人はすべて、英語を話すため協会の趣旨「アメリカで日本の伝統文化を普及する」にふさわしく、「バイリンガルの生徒を育てたい」と、切に願う小泉師から大きな期待が寄せられている。
江戸千家小笠原煎茶道の山口弘南加支部長(左)にお茶を出す野本宗智師の弟子
亭主のポール・ニューカムさん、半東のステファニー・ワトソンさんと、お菓子とお茶を出した計7人のメンバーは、床に掲げた山下顕光筆「一期一会」を肝に銘じて尽くした。ワトソンさんは、日本人客へ配慮し、あえて不慣れな日本語で「ホンジツハ、オアツマリイタダキ…」とあいさつし、説明もすべて日本語で行うと「お上手です」などと、賞賛の声が上がった。
野本師は、弟子について「今夜は、各自が役目を立派に務め上げてくれた」と誉め、「日本語が分からず、日本に何のバックグラウンドを持たない生徒ばかりだが、普及のために一同で精進したい」と、抱負を述べた。
ヨーバリンダから来たゲストのトレーシー、パティー・ヒュー—ウィトニーさん夫妻は、2度目の茶会参加。「すばらしいセレモニーを見せてもらった。お菓子とお茶、料理がおいしく、月がとてもきれいで、楽しい時間を過ごすことができた。また参加したい」と喜んだ。
小泉師は、茶会について「月がきれいに出て、みなさんに満月を見てもらえて、よかった。『アメリカでこんな雅な茶会ができることはすばらしい』と誉めてもらった。うれしく思い、苦労したかいがあった」と語った。各社中の弟子、孫弟子のもてなしを評し「お客さんを待たせることなく、よく働いてくれた。支度からたいへんだったけど、がんばってくれた」とたたえた。【永田潤、写真も】
本席で振る舞われた主菓子の「薄紅葉」(写真上右)と、立礼席で用いられた茶道具
裏千家の山下宗裕社中、沼野宗富社中らを招いた本席。劉クレアさん(右手前)による点前
表、裏両千家、小笠原煎茶道などの茶人はもとより、書家や日本舞踏家など文化人が多く参加した野点。点前は、ポール・ニューカムさん(右)
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