カニから高濃度の自然毒検出:加州当局が注意勧告
カリフォルニア州公衆衛生局は、同州の太平洋沿岸で採集されたダンジネスクラブ(アメリカイチョウガニ)とロッククラブ(イワガニ)から高濃度の自然毒「ドウモイ酸」が検出されたとして、消費者に沿岸で獲れたカニを食べないよう注意勧告した。
魚介類の検査は定期的に行われ、高濃度のドウモイ酸は、オレゴン州との州境からサンタバーバラ郡にかけての太平洋沿岸で採集されたカニから検出された。 ドウモイ酸は貝類や甲殻類などに検出されることが多い神経毒で、食後数時間以内に腹痛や嘔吐、下痢などの食中毒症状が現れる。重症患者の場合は記憶喪失や脳障害なども引き起こし、死に至るケースもある。 ロッククラブは年間を通して採集でき、レジャー目的のダンジネスクラブの解禁日は7日、商業用の解禁日は15日となっている。 解禁日の直前に毒素が検出されたことを受け、カリフォルニア州漁業狩猟局は5日、ベンチュラ郡北部からサンタバーバラ郡にかけての太平洋沿岸でのロッククラブ漁を停止し、レジャー目的のダンジネスクラブ漁の解禁の延期を発表。最大6カ月遅らせる決定を下した。商業用に関しては現時点では未定。 ドウモイ酸は赤潮の原因となる植物プランクトンの一種が作り出す毒を貝が摂取し、蓄積されることで有毒化する。 有毒化した貝類を外見から判断することはできず、加熱しても毒性がなくならない特性を持ち、現時点で有効な対策法がない。 同局の広報担当官によると、エルニーニョ現象の影響で海水温が上昇し、植物プランクトンの一種であるケイ藻が増加したことが原因となっているとみられている。 ドウモイ酸による人への食中毒被害は、1987年にカナダで発生した1件のみ。養殖ムール貝を食べた107人が感染し、うち4人が死亡、12人に記憶障害の後遺症が残る大規模な集団食中毒となった。 98年には加州モントレー湾でドウモイ酸が原因とみられるアザラシの大量死も発生している。【吉田純子】
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