ガス漏出事故:加州上院が規制案可決、下院で審議へ
事故発生からこれまでに8万8千トン以上のガスが漏出し、全施設閉鎖を訴えるポーターランチの住民たち
カリフォルニア州議会上院は28日、ロサンゼルス北部ポーターランチにある南カリフォルニア・ガス・カンパニー(SoCal Gas Co)のガス貯蔵施設から大量のメタンガスが漏出している問題で、ガス漏出の即時停止を求める規制案を全会一致で可決した。法案は今後、加州議会下院に送られ審議される。【吉田純子、写真も】
同法案はガス漏れの即時停止措置だけでなく、石油や天然ガスなどのエネルギーの安全性を取り締まる加州機関「Division of Oil, Gas and Geothermal Resources(DOGGR)」によって安全性が確認されるまで、施設敷地内にある1950年代に作られたすべての井戸の使用も規制する内容となっている。 また加州公益事業委員会に対し、敷地内すべての貯蔵施設を閉鎖すべきかどうか審査するよう求めた。 こうした事態の中、加州民主党のバーバラー・ボクサー、ダイアン・ファインスタイン両上院議員は29日、連邦政府にガス漏出事件の調査依頼を申請すると発表した。これによりエネルギー省のアーネスト・モニツ長官が筆頭となり、事故原因の究明が行われることになる。 同施設はもともと石油採掘施設として利用されていたが油田が枯渇し、1970年代にSoCalGasが買い取り、油井をガス貯蔵用井戸として活用していた。南カリフォルニア大気環境管理局によると、ガス井の深さは地下8500フィート。およそ3600エーカーの施設内に115の井戸があり、施設全体で約860億立法フィートの天然ガスを貯蔵している。今回はそのうちの1つが損傷。今なお漏出が続いている。 今回の事件を担当している弁護士のひとりロバート・ケネディ・Jr氏によると漏れているメタンガスは地球温暖化効果が高く、二酸化炭素の84倍の温室効果があるという。SoCalGasはメタンガスは長期的な健康への影響はないとしているが、施設周辺からは鼻血や嘔吐、頭痛などの症状を訴える住民が後を絶たない。現在までに、南カリフォルニア大気環境管理局には施設から異臭がするとの住民からの苦情が1600件以上寄せられている。 同社のジミー・チョウ副社長によると、現在、漏出しているガス井に液体や泥を注入しガスの流出を食い止める試みを計画しており、作業が完了するのは2月下旬を予定している。 昨年10月23日に漏出が発生してからこれまでに施設近隣住民およそ3700世帯がホテルなどに転居し避難生活を送っている。転居に伴う費用はガス会社が負担。今も約2500世帯が転居希望を申請している。 26日にはロサンゼルス市議会が転居希望者の対象エリアをポーターランチだけでなく、グラナダヒルズ、チャッツワース、ノースリッジまで範囲を拡大する提案を承認。今後、さらに転居希望者が増えると予想される。 施設があるポーターランチの住民は漏出しているガス井だけでなく、施設全体の閉鎖を希望しており、これまでにロサンゼルス郡のマイケル・アントノヴィッチ郡参事は住民側の訴えに対し支持を表明。 27日にはポーターランチの住民を守るため発足されたNPO「Save Porter Ranch」のメンバーが住民側を代表してLA市のエリック・ガーセッティー市長と面会した。しかし現時点ではガーセッティー市長は住民側の要望を聞くだけにとどまった。一方で長期的な健康被害に関する調査は同市も協力して実施するとしている。
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