グリーンカード神話
女心と移民法(イミグレーション規則)は前触れなしに、よく変わる―女心と秋の空が変わりやすいと言われたのは、今は昔。気象衛星の発達で天気予報は数週間先までかなり正確に予測可能になったが、移民国家アメリカの移民法は猫の目のように変わり、明日のことさえ分からない。 女心がどの程度の頻度で変わるのかは、誰も統計を取ったことがないので、正確なところは掴めない。男たちにとっては、女心の微妙な変化は気になるところだろうが、それと同じくらい移民法の変更に気をもむ人たちが増えている。 かつて、永住権(グリーンカード)はひとたび取得したら生涯有効だと考えられた。しかし、その後、国外滞在期間が制約されたり、10年ごとの更新が必要になったりと、当局の都合による移民法改正なんて日常茶飯事。 国土安全保障省などの資料によると、グリーンカードは通常、家族関係、仕事関連、人道上の見地、ロット当選などによって得ることが可能とされる。このうち、一番多いのが結婚や親子などの家族関係によってグリーンカードを取得する人で、全体の60~70%。また、グリーンカードを取得して5年経った人(アメリカ市民と結婚した場合は3年後)に申請資格がある市民権予備軍は現在、カリフォルニア州に230万人、全米では900万人以上もいる。 出生国の国籍を維持したいと思うのは人情だし、加えて市民権申請料が640ドル+犯罪歴調査費85ドル、計725ドルもかかることも影響してか、多くの人が市民権取得を敬遠してきた。 ところが、移民政策に厳しい態度で臨むトランプ政権になって事情が変わった。たとえグリーンカード所持者でも、特にイスラム圏諸国から米国に再入国する際に入国を断られるという事態を睨んで、市民権申請が増加しているのだ。 一生涯効力を持つといったグリーンカード神話は崩れつつあるようにも見え、気分次第の女心と同様に、その変わりようを心して見ていかないといけない―。【石原 嵩】
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