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Writer's pictureRafu Shimpo

グローバル戦略へ「飛躍の年」:念願の東京オフィス開設

アニメ・エキスポの開幕と同時に入場する大勢のファン

アニメ・エキスポの開幕と同時に入場する大勢のファン

 北米最大の日本アニメの祭典「アニメ・エキスポ」は、今年25回記念を迎える。主催者の「SPJA」(日本アニメーション振興協会、マーク・ペレス会長)は、ミッションの「日本のカルチャーを紹介すること」を堅持し、アニメをはじめとする音楽、ファッション、ゲームなどのJポップカルチャーに特化することで、米国で伸び盛りの日本アニメの産業発展の一翼を担っている。今年は、念願の東京オフィス開設を予定し、「飛躍の年」と位置づけ、グローバル戦略に弾みをつける。【永田 潤】

アニメのキャラクターに扮し、ポーズを決めるコスプレーヤー

アニメのキャラクターに扮し、ポーズを決めるコスプレーヤー

 アニメ・エキスポは、サンフランシスコのカル・バークリー大の学生ボランティアグループによる「アニメコン」として、1992年にサンホゼで始まった。翌年はオークランドで行ったが、米アニメ産業の成長を見越し、より大きな市場を追い求め94年に南カリフォルニアに拠点を移した。アナハイム、ロングビーチなどで催した後、2008年からはロサンゼルスに移り、聖地コンベンションセンターには昨年、延べ26万人のアニメファンが集結、大イベントに成長した。  イベントが独立記念日の週に定着したのは、より多くの来場者が望める上に、コンベンションの繁忙期を避けることができるため、会場をよりよい条件で契約できる利点がある。祝日の連休はまた、主催者、ゲスト、ベンダー、来場者のためのホテルなどが利用しやすい理由もあり、LAにおける独立記念日の風物詩となっている。  今年のアニメ・エキスポは、7月1日から4日までの4日間開催する。

エキスポ軸に4イベント 業界全体の発展目指す  SPJAは、アニメ・エキスポを軸に、他3つの年間イベント—「プロジェクト・アニメ」「アニメコンジ」「コスプレエキスポ」を主催し、業界全体の発展を目指す。  アニメコンジは、サンディエゴで開くアニメ・エキスポの姉妹イベントで、アニメ・エキスポを小さくした妹分。規模は小さいが、中身が濃く人気が高い。  「コスプレーヤーの数はここ2、3年で急速に増えてきて、いい方向に向かっている」と、ペレス会長。その人気に応え、昨年11月に第1回「コスプレエキスポ」をバンナイズの日本庭園「水芳園」で開いた。約500人の参加があり、好評を得たことから今年も行う。

富士山と桜、鳥居のセットを設けるアニメ・エキスポ。記念撮影で人気だった

富士山と桜、鳥居のセットを設けるアニメ・エキスポ。記念撮影で人気だった

 文化振興のためには、「B to B」の業界イベントを欠かすことはできない。プロジェクト・アニメは「コミコン」(コミックと映画に関する世界最大のコンベンション)などの参加者と手を組み、日本文化にかかわるイベント業者と円卓会議を持つ。フォーラムのようにテーマを設け、アニメ界のエキスパートが意見を述べたり、質問を聞いたりし、よりよい運営を目指し、結果を生み出すための活発な議論を交わす。  セキュリティーを扱う業者や法律事務所も加わり、コピーライトの保護方法や、契約違反の対処など、さまざまな議題が上る。産業界からも招待し、制作、マーケティングなど各部署が参加し、前回の会議ではJETROがプレゼンテーションを行った。有益な情報を提供し、互いに交換する。  年に約5回開催し、昨年は東京、シンガポール、ロサンゼルス、アトランタ、ベルギー(欧州)で催した。開催場所は地域でいうと、日本・東京、東南アジア、米国の東西両海岸、欧州に分けている。  業界の橋渡しをするこの国際会議では、ライバル業者も一緒になって、敵味方はなく、話し合いまた、学び合う。前回は26社の仲を取り持ち、人脈作りにも寄与する。

4日間で延べ26万人来場 規模拡大の一途のエキスポ  組織を率いて今年で5年目を迎えるペレス会長は、SPJAが非営利としての体制を変えない理由を「営利目的でなく、日本文化のプロモーションであるため」と、説明する。協会にはオーナー不在で、株式化していないため個人への配分も行う必要はない。

ドラゴンボールZのフィギュアを売る人気のブース

ドラゴンボールZのフィギュアを売る人気のブース

 アニメ・エキスポの来場者数は、年々伸ばしていて10年が4日間で延べ10万5千人だったが、15年は4日間で延べ約26万人と、5年で2倍以上の伸びを見せた。来年は、前夜祭を催す予定で、5日間に開催日数を増やすなど、規模は拡大の一途をたどる。  コンベンションセンターに移った当初は、サウスホールのみで行っていたが、ウエストホールを使用するようになった。今では、4つの大会場に加え、各分科会のための小中イベントルーム、そして隣接するホテルのJWマリオットの会議室を利用し、プレゼンテーションを行っている。  来場者、出展者、スポンサーが増え、増収により「翌年のアニメ・エキスポや、他のイベントでのプロモーションを行うための資金を有効に活用できるようになった」と喜んでいる。

オークションで社会貢献 被災者や病人を救済 出品は「お宝」ばかり  アニメ・エキスポは、開催期間中にチャリティーオークションを行っており、これまでに東日本大震災の被災地救援や、オレンジ郡の子ども病院の患者

七夕まつりの紹介。笹が飾られ、短冊に願いを込める参加者

七夕まつりの紹介。笹が飾られ、短冊に願いを込める参加者

などに見舞金を送った。毎年違った団体に寄付し、社会貢献を果たしている。昨年のオークションでは、約2万2000ドルを売り上げた。  漫画家やキャラクターデザイナーなど、アーティストのカスタムアートワークが出展される。すべて、人気アーティストとスポンサーから無償で提供され、CD、ポスター、Tシャツ、サイン色紙など、ファンにとってはたまらい「お宝」のアイテムばかりで喜ばれている。  アニメ・エキスポのプログラムの表紙を引き伸ばした公式ポスターは希少で、そこにすべてのゲストアーティストがサインすると価値は格段に上がり、5000ドル近くで競り落とされることがある。

日本から大物ゲスト AKB、ももクロなど招待  アニメ・エキスポを訪れるファンの楽しみの1つが、ゲストアーティストのコンサートやサイン会、トークショーだ。ゲストは、監督にプロデューサー、キャラクターデザイナーやライター、男女の声優、アニメのテーマソングを歌う歌手とバンドのメンバー、ファッションデザイナー、ゲームではク

昨年のビッグゲスト、ももいろクローバーZ。米国デビューを飾り、熱唱を披露し沸かせた

昨年のビッグゲスト、ももいろクローバーZ。米国デビューを飾り、熱唱を披露し沸かせた

リエーターや作曲家、スポンサーからは社長、重役など、さまざま。  日本からのゲストは毎年、NHK紅白歌合戦の出場経験者や、武道館でコンサートを行った歌手やバンドグループ、アイドルなどの大物が登場。ノキアシアターでコンサートを催し、呼び物になっている。  主催者は、ビッグアーティストを呼ぶ理由を「ファンが見たいと、ずっと待ち望んでいるから」といい、「アメリカで初めて公演するアーティストが多く、ファンに楽しんでもらえる。他のコンベンションができないことをして、ファンに喜んでもらえることがうれしい」と胸を張る。  これまでのビッグゲストは、松本零士、中川翔子、SKIN(YOSHIKI、GACKT、SUGIZO 、雅)、PUFFY、モーニング娘。、つんく♂、AKB48、SOPHIA、相武紗季、ポルノグラフィティ、ももいろクローバーZなど。今年招くゲストも交渉中で、すでに数人と契約を済ませたという。

日本アニメを専門に振興 設立の理念を尊重し継承 活動の趣旨にブレはなし  世界の多くの国に独自のアニメがあるが、SPJAは、バークリー大の学生の設立の理念を尊重、継承し、日本文化と日本のアニメを専門とする活動の趣旨にブレはない。米国の若いファンに最新の情報と交流の場を提供するとともに、業者間をつなぐ、さまざまな役割を果たしている。  「日本の食べ物や文化、音楽、ファッション、などに魅了されると、人生ずっと日本に感謝するようになる」と、ペレス会長

格闘ゲームに興じる「ゲーマー」たち

格闘ゲームに興じる「ゲーマー」たち

は持論を述べる。日本アニメの愛好者は、それが端的に表れているとし「日本のアニメを見たり、日本のコンピュータゲームをして育っている人を見てきたが、日本のいい影響を受けてずっと過ごしている。多くの日本文化の中で、アニメはわずかな一部分かもしれないが、とても重要な役割を占めている」と力説する。  日本アニメの特徴を「キャラクターの目が大きく、カラフルな色使いの凝っtアートワークと、小説のようなストリーは印象に残る。コミカルもあれば、シリアスなドラマ、アクションもある。おもしろく、エンターテインメント性に富むことが、他の国のアニメとの大きな違い」と説く。「感動したり、感傷的なったり、感情が移入され、アニメの世界に入り込んでしまうほど、完成度が高い」  日米で比較をすれば、米国のアニメはシリーズ性があまりないため「1話をみれば、2話、3話を見たい気持ちには、あまりならないだろう」と指摘する。一方の日本アニメは「1話を見ると、次が絶対に見たくなり、またその次へと繰り返す。ストーリーがドラマのようにどんどん発展していき、面白みは増す。ドラマ、コメディー、スポーツ、アクション、サイエンス、サイファイ(サイエンス・フィクション)など、幅広いジャンルは世界に類を見ない」と、絶賛する。

「世界最高のコンテンツ」 日本アニメを売り込め  ペレス会長は、日本について「伝統文化とポップカルチャーが、すばらしい」と、たたえる一方で、経済を懸念する。日本国内の市場は、高齢化と少子化による人口減少に伴い苦戦し、アニメと漫画も例外ではないと指摘する。  米国の某有名アニメ制作会社を例に挙げ「ある年の売り上げ(少し古いデーターだが)で1200万ドルを稼いだが、国内では300万ドルにとどまり、残りの900万ドルを国際市場で集めた。だから、日本の制作会社には「国内よりも将来が嘱望される若いアニメ作家の作品を買い求めるファン海外

将来が嘱望される若いアニメ作家の作品を買い求めるファン

将来が嘱望される若いアニメ作家の作品を買い求めるファン

の方が市場はずっと大きく、日本は世界が認める最高のコンテンツを持っているので、国外に売り込めばいい。日本は大きな可能性を持っている」と激励しているという。「自動車のトヨタ、カメラのキャノン、家電のソニーなどが国際市場に出ていて、これらの産業を模範に、アニメも外に出るべきである」と提唱する。  SPJAは、米国内でのアニメとコミックエキスポが年間400近くあることを把握しており、世界全体では年間1200イベントが開催されているという。日本の制作会社に対し、米国内のプロモーションでは「日本のアニメだけを扱うアニメ・エキスポ参加に限らず、米国と他の国のアニメを紹介するイベントに参加して、助けてもらうといい。イベントにどんどん出て、試写会などを催せばいい」とエールを送る。  日本アニメのイベントの来場者数は、世界中でどこも伸びていて、この先の見通しも明るいという。和食人気に、あやかり「すし店やラーメン店の増加は、かつてカリフォルニアなどの大都市だけだったが、今ではオマハなど地方でも次々に開店して、店舗数は増えている。それと同様に、アニメも業界が一丸となって取り組めば、和食に続くことができるだろう」と期待を込める。

25回記念、成功へ全力 ペレス会長「ガンバリマス」  今年の1月か2月に、念願だった東京オフィスを開設する。立地は大詰めで、浅草、代々木、新宿の中から一本に絞っているという。  日本にオフィスを構える理由を「日本で活動する、アニメをはじめとする日本文化普及にかかわる会社や団体と付き合う上で、現地オフィスの開設により日本との関係がより密になる」とし、自信を込める。  米国での本拠のオレンジ郡サンタアナ・オフィスには、日英の2カ国語のスタッフがいて、スカイプなどインターネットを通して同時にコミュニケーションを図っているものの「日本でオフィスを持って、人と人が顔を合わせて話すことはとても重要。日本の業界との関係が、よりよくなり楽しみ」と心待ちにする。  東京オフィスの役目について「米国進出を目指す団体や業者のための身近な窓口と、招待するゲストの交渉をスムーズに行いたい」と希望。JETROと異なる役割は、アニメを中心としたエンターテインメント専門の会社や団体と付き合い、現地スタッフ2、3人で対応する予定。  ペレス会長は、今年の抱負として「2016年は、アニメ・エキスポが節目の25回目を迎え、全力で成功させ記念を祝いたい。そしてこれまでで、最も忙しく、最多の投資で、発展させなければならない年である。歴史的な飛躍の年になるようにしたい。ガンバリマス」

2016年を「歴史的な飛躍の年に」と願うSPJAのマーク・ペレス会長

2016年を「歴史的な飛躍の年に」と願うSPJAのマーク・ペレス会長


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