コミュニティーへの献身
バケットリスト。それは「死ぬまでにしたいことリスト」のことをいう。数年前、モーガン・フリーマンとジャック・ニコルソン主演の同名の映画が上映されたのは記憶に新しい。がんで余命宣告された2人の主人公がバケットリストに書いた死ぬまでにしたいことを一緒に達成していく物語だ。後悔先に立たず。人生は思い切り楽しまなければもったいない。 先日、ミズーリ州に住む102歳のおばあさんが犯罪を犯してもいないのに逮捕された。「一体何があったのか」。実はこれ、逮捕されることがおばあさんのバケットリストに書いた長年の夢だったのだ。 同州セントルイスの高齢者施設で暮らすエディー・シムズさんは人生の中で一度でいいから手錠を掛けられパトカーで連行されたいという夢があった。そして見事その夢が叶えられたのだ。 彼女は長年施設でボランティア活動をしており、献身的に貢献してくれたシムズさんにお礼がしたいと、施設側からの計らいだったという。 地元警察も協力。パトカーが向かった先はシムズさんが住む高齢者施設。警官はシムズさんを気遣い、手をつないでシムズさんを連行した。一応手錠も掛けられていたが片手だけ。杖を使うため両手に手錠を掛けてしまうと歩行に差し支えるからだ。逮捕後、感想を聞かれたシムズさんは「パトカーに乗れて最高よ!」と終始ご機嫌だった。彼女はさらに、好きなことを続けること、そしてコミュニティーへの奉仕活動がいかに素晴らしいかを力説した。「目を開けて、よく見ると、この世界はすばらしいわ」。102年の歳月を生きてきたシムズさんだからこそ、この言葉には重みがある。 そんな彼女の言葉を聞いていて思い浮かんだのが当地の日系社会。好きな趣味に没頭し、90歳を超えてもなおコミュニティーへの奉仕活動に尽力する人々の姿がここにはある。言葉の壁や文化の違いを経験してきたからこそ、今こうした困難に直面する人々の助けとなり、文化イベントにも積極的に参加し、準備に携わるなど活動は多岐にわたる。「目を開けて、よく見ると、日系社会もすばらしい」。そう思えるロサンゼルスだと私は思う。【吉田純子】
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