ジョージ・タケイ:JANMに映画「Kubo」のパペット寄贈
ナイト監督(左から3人目)、ジョージ・タケイ(右から2人目)と制作チーム
現在公開中のライカ・スタジオ制作のストップモーション・アニメ「Kubo and the Two Strings」で、声優として出演した日系人俳優ジョージ・タケイが8月25日、全米日系人博物館(JANM)を訪れ、自身の役のパペットを寄贈した。同スタジオ社長で、本作で監督デビューを果たしたトラビス・ナイト氏も出席し、本作への思いを語った。【吉田純子、写真も】
主人公クボのパペット
映画の舞台は古代の日本。主人公の少年クボは片目を失った吟遊詩人で、海辺の村で母を看病しながらつつましく暮らしていた。クボには不思議な能力があり、三味線を弾きながら折り紙を自由自在に操ることができる。ある日、侍だった父の死の謎を解き明かすため旅に出る。三味線や折り紙、着物など日本の要素が数多く登場するアニメ映画だ。 ライカ・スタジオは、静止した物体を1コマずつ少しずつ動かしながら撮影し、連続して動いているかのように見せる撮影手法「ストップモーション・アニメーション」でアニメ映画を制作するスタジオとして知られる。パペットはワイヤーで出来ており、指や着ている着物も自在に動かすことができる。 JANMのアラタニ・セントラル・ホールでは実際に撮影に使用した折り紙やパペット、小道具などが8月30日まで展示された。 「スター・トレック」のヒカル・スールー役でお馴染みのタケイはクボの父・穂郷(ほさと)の声を担当。穂郷はタケイ本人のミドルネームだ。幼い頃にスター・トレックを見て以来、タケイの大ファンだったナイト監督がタケイのミドルネームを役につけたいと提案したところタケイが承諾した。
パペットが着用した着物の生地。細部にまで刺繍がしてあり一つひとつに手が込んでいる
スポーツ用品メーカー「ナイキ」の創業者で現名誉会長のフィル・ナイト氏を父にもつ同監督は、幼い頃から父に連れられ日本に行っていた。「はじめて日本を訪れたのは8歳の時。文化、アート、庭園、建築に至るまで見るものすべてが美しく瞬く間に魅了されました。その魔法は今も解かれることがないのです」
いつか日本を舞台にした作品を作りたいと願っていた同監督にとって本作はまさに夢の作品。「私の人生の中でもっとも嬉しかった出来事のひとつがタケイをキャスティングできたこと。彼は日本人の両親の生い立ちを話してくれました。家族との思い出が今回のクボの父親役に投影され、作品をより素晴らしいものにしてくれました」とナイト監督は語る。
タケイは「日本を舞台にした作品に携わることができて光栄です。日系人の歴史が詰まったJANMに、私が(声で)携わった作品の一部を寄贈できたことに大変意義を感じています」と述べ、多くの人が本作を通して日本文化に興味をもってくれることを願った。
クボの母親のパペットの顔を分解して仕組みを説明するクリエイティブ・ディレクター
本作ではハリウッドで活躍する俳優マシュー・マコノヒーやシャーリーズ・セロンほか、「ラストエンペラー」などに出演した日系人俳優ケイリー・ヒロユキ・タガワらが声優を務めた。
映画評論家のこはたあつこさんは「独創的な作品で、手作りで作られているのが感じられ、世界観に引き込まれました」と話す。特に興味深かったのがパペットの表情。「おばあさんの表情が日本のおばあさんではなく、米国にいる日系2世のおばあさんに近い表情だと感じました」。日本人が見る「日本」ではなく、米国人から見る「日本」が作品に現れていたという。
同監督いわく、「私は宮崎駿監督の作品に多大な影響を受けました。彼の作品の中にはヨーロッパの風景がたびたび登場しますが、その風景はおそらく本物のヨーロッパの景色とは違うでしょう。作品の世界に合うよう、彼なりに表現した景色なのです。私も同じように私たちなりの世界観を作り出したかったのです」と話した。
主人公クボの父親の声を担当し、撮影で使用されたパペットをJANMに寄贈したジョージ・タケイ
主人公クボ(左から2人目)と登場人物のパペット
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