タトゥーはファッション!?
「やかましぃやい、悪党ども! この桜吹雪に見覚えがねぇとは言わせねえぜ!」と江戸言葉で啖呵を切って片肌を脱ぎ、桜の彫り物を見せつけて悪人たちを一喝する時代劇のシーンは、ご存知「遠山の金さん」のヤマ場。視聴者に一種のカタルシス(精神、感情の浄化)を感じさせる。 江戸北町奉行の遠山金四郎景元の体には和彫りの見事な入れ墨があったと伝承されているが、実際にこれを裏付ける資料はないという。劇作家の創作なのかもしれないが、人類は古来から、身分や所属などを示す個体識別の手段として入れ墨(刺青、ほりもの、タトゥーTattoo)が用いられてきたのは事実。 夏も盛りのいま、街中を歩いていると、桜吹雪とまではいかないまでも、男女を問わず若い人たちの刺青がやけに目に入る。十数年前には見られなかった光景である。一つの流行なのだろうか。 消すことも出来るタトゥーシールを含めて、ファッションタトゥー、プチタトゥー、ワンポイントタトゥーなどもあり、ボディーアートの感覚なのだろうか。文様、文字、絵柄など定番から自在なデザインまであって、刺青文化なる言葉も聞こえてくる。 日本では弥生時代にはすでに入れ墨が施されていたとの記録があるが、アメリカで刺青を流行らせたのは1960年代末のヒッピー文化。その影響を受けた世代を両親に持ついまの若年層は、第2世代ヒッピーともいえるのだが、彼らの間でファッションの意味合いで刺青が受け入れられているようだ。 日本人の感覚では、刺青はかつて受刑者の識別に使われたし、その後は暴力団など反社会的組織の構成員の多くが刺青をしていることなどから、社会的に認知されているとは言い切れない。 世間の理解をなかなか得られない中、ロサンゼルス南郊のトーレンス市は先週、1959年から禁止していたタトゥー・パーラーの営業を56年ぶりに認める決定を下した。同市はパーラー営業許可をめぐり10年以上にわたり係争中だったが、言論・出版・宗教・集会の自由などを保障した憲法修正第1条に照らし、これ以上争っても勝ち目はないとの判断。 もちろん、刺青の有無だけで人の善し悪しは判断できないし、刺青をしていなくても悪人はたくさんいるというのも一つの正論だろう。遠山の金さんなら、今の刺青文化をどう裁くのだろうか?【石原 嵩】
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