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Writer's pictureRafu Shimpo

ビジネスワイド:世界を目指して1世紀【下】

6月に代表取締役会長に就任した味の素社の伊藤雅俊氏(味の素東京本社で撮影)

6月に代表取締役会長に就任した味の素社の伊藤雅俊氏(味の素東京本社で撮影)


味の素代表取締役会長 伊藤雅俊氏

 今からおよそ1世紀前にはすでに米国に進出し、現在約130カ国・地域で製品が販売されている味の素社。グローバル企業として成長を続けるその陰には、早くから世界に目を向け、未開の地に挑んだ創業者のフロンティア精神が息づいていた。創業者の志を今に受け継ぎ、6月に代表取締役会長に就任した伊藤雅俊氏に、米国での事業展開やグローバル企業について話を聞く後編【取材=吉田純子】

「うま味」で世界目指す 今も生きる創業者の精神

 同社が誇る一番の強みは製造技術。冷凍炒飯であれば、米をまとめて凍らせるのではなく、一粒一粒凍らせ、分散性が良く、食感も残した製品に仕上げる技術を導入している。  「入社当時からただの食品会社ではなく、サイエンスで仕事をする会社だと思っていました」。当時から同社は海外との仕事が多く、世界各国の大手メーカーと仕事をし、分野を広げ多角化していた時代。世界に挑む姿勢に魅力を感じ入社を決意したと伊藤会長は振り返る。  入社後は国内営業を経て、米企業との合併事業に参画。その時初めて海外のビジネスマンと仕事をし、米国人のマーケティングの仕方や事業戦略の立て方などを学んだ。  社員の多くが海外での勤務を経験し、役員14人(うち社外役員2人)のうち海外駐在経験がないのは2人だけ。ほか12人はみな海外駐在経験者だ。また全社員3万人のうち1万人が日本勤務、2万人が海外。うち300人が日本人駐在員で、ほかは現地採用の社員だ。  こうした海外に目を向けた同社の経営方針は古く創業者の精神にまでさかのぼる。  同社は日本企業としてはいち早く海外に進出した。さかのぼること1世紀以上前、1909年(明治42年)に創業。その8年後の17年(大正6年)には米国進出を果たしている。

2014年1月に味の素社ナイジェリア法人を訪問し、製品を確認する伊藤会長(味の素社提供)

2014年1月に味の素社ナイジェリア法人を訪問し、製品を確認する伊藤会長(味の素社提供)

 社名にもなった「味の素」は、同社が製造販売するグルタミン酸ナトリウムを主成分とするうま味調味料だ。  かつて人が感じる味覚は「甘味」「酸味」「苦味」「塩味」の4種だった。しかし07年(明治40年)に東京帝国大学(現東京大学)の池田菊苗博士が舌で感じる第5の味覚「うま味」を発見した。  池田博士の研究成果に可能性を見いだし事業化したのが同社創業者・鈴木三郎助氏だ。100年の歳月を経て、現在うま味は米国でも認知されてきている。  同社は17年にニューヨーク事務所を設立し、鈴木三郎助氏の息子・鈴木三郎氏が事務所運営を任された。  ある日、三郎氏は同地で優秀な日本人青年がいるとの情報を聞きつけた。彼の名は道面豊信。広島県で生まれ、高校卒業後に渡米し、オハイオ北部大学卒業後、コロンビア大学で1年間経済を学び、その後ニュージャージー州にある日系人が経営する商店で働いていた。  彼の切れの良さを見抜いた三郎氏はすぐに道面氏を採用。米国事業を託した。当時、日本企業が現地で人材を見つけ、そのまま採用することは非常に珍しいことだったという。しかし、創業者の方針のもと、早くからグローバル企業として海外に進出していった同社は、現地の若者も積極的に採用した。  若くして米国にわたった道面氏の開拓精神、米国式の経営方法は、米市場での製品売り込みや規模拡大などで功をなし、余すことなく手腕を発揮した。志高き日本人青年は、海をわたり米国で商才を開花させ、後に同社4代目社長に就任することになる。  国際感覚を身につけた若者を当時から採用し、世界各地で積極的に市場開拓していった創業者のチャレンジ精神は今も同社に脈々と受け継がれていると伊藤会長は語る。

その国の文化、人を理解 グローバル企業に必要な「現地化」

 「食」を扱うビジネスは地域の文化性、伝統が大きく影響すると伊藤会長は話す。「人間は食べたことのないものは拒否するようにできています。だからこそ、食を世界で扱うのであれば、その土地の人々の嗜好、習慣を理解することが求められるのです」。違う文化の中で食を売るためにもっとも重要なことは「その国の人が仕事をすること」、つまり「現地化」がもっとも重要であると説く。  現地の言葉を話し、現地の食べ物を好きになり、現地の人と仕事ができる。それがグローバル企業の社員に求められる要素だと伊藤会長は話す。

2014年1月に同社ナイジェリア法人を訪問し、市場視察した際の伊藤会長(後列左から5人目)。赤い制服の現地営業マンたちとともに (味の素社提供)

2014年1月に同社ナイジェリア法人を訪問し、市場視察した際の伊藤会長(後列左から5人目)。赤い制服の現地営業マンたちとともに (味の素社提供)


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