ビジネスワイド:急成長遂げさらなる飛躍を
米国で急速に店舗を拡大し、さらなる飛躍を目指すダイソー社の村田上級副社長
ダイソー上級副社長
村田良英さん
ロサンゼルス、サンディエゴを含む南カリフォルニア地区に現在29店舗。サンフランシスコ近郊のベイエリアに10店舗。シアトルに6店舗と全米に計45店舗を展開するダイソー社。ここ数年で急速に店舗数を増やし、急成長を遂げている。さらなる飛躍を目指す同社の村田良英上級副社長に米国進出のきっかけや米国での挑戦など話を聞いた。【取材=吉田純子】
米国進出はシアトルから 可能性高いLAのマーケット
2005年10月、ワシントン州シアトルに米国1号店をオープンした。当時同社はグローバル化を目指し、シンガポールやタイ、台湾などアジア諸国に海外展開を始めた時期だった。 米国進出に伴い、どれだけ米国人に商品が受け入れてもらえるか懸念があった。規制の問題もあり、特に色素が含まれている食品や玩具に関しては米国の規制は厳しい。 当時、日本のリテール各社の米国進出が相次いだが、撤退を余儀なくされていた。それだけハードルが高いマーケットであることは分かっていた。 検討の末、会社として進出を決意。シアトルに1号店をオープンさせたのが10年前だ。翌年にはサンフランシスコ店もオープン。通関や規制の問題で、米国に輸入できない商品も多かったが、マーケティングをしながら店舗数を拡大している。 1号店をシアトルに決めた理由は2つ。ひとつはシアトルに良い物件があったこと。もうひとつはカナダに同社の代理店があり、地理的に近かったこと。またシアトルにはスターバックスをはじめ同地発祥の企業が多い。小売業も例外ではなく会員制卸売小売チェーンの「Costco(コスコ)」や大型チェーンデパート「ノードストローム」、スポーツ・アウトドア用品専門店「REI」も同地から始まった。 LA地区に進出したのは3年前。マーケットが大きい分、競争が激しいエリアだということは目に見えていた。進出前に4年ほどマーケティングリサーチを行い、入念にプロジェクトを進行させた。 南加地区1号店をトーレンスにオープンさせると同時に反響があり手応えを感じた。「トーレンス店が米国での店舗拡大に向け大きな飛躍になったといえます。今後もLA地区でさらに店舗を増やしていこうと思っています」 これまでの南加地区での立地はさまざまだ。レイクフォレスト店は白人が多いエリア。モントレーパークは中国系、ガーデングローブはヒスパニックやベトナム系が多い。「もっといろいろな人種のお客さまに受け入れてもらえるようになりたい」と村田さんは話す。 LAの魅力は何といってもマーケットが大きい分、その可能性も高いことがあげられる。「これだけの人口がある当地で支持が得られたのであれば、早く店舗数を増やし、日本人だけでなく、米国人にも受け入れてもらえる商品を増やしていきたい。加州だけでなく他州にも進出を目指しています」 同社は今夏、テキサス州ダラスにも店舗をオープンさせる予定だ。現在テキサスは人口が増加し、マーケットも大きい。加州に比べ生活費も安く、同州に移住する人も増えている。ビジネスの可能性は十分あると判断した。
日本の雑貨文化を世界に 新たなビジネスモデルの構築
「日本の雑貨が世界で一番質が良いと思っています。日本の雑貨文化は米国で新たなビジネスモデルになっていくのではないでしょうか」 「価格と質とユニークさ、面白い物」を常に意識し商品を展開。招き猫など日本ならではの縁起物はアジア系の客から好評だ。 今では訪日したことがある米国人も多く、日本のダイソーで買い物をした客が当地の店舗にも足を運ぶことが多くなってきたと村田さんは話す。 ここ1年で商品にポップを付け、商品説明を開始。日本人以外の客に見慣れない商品への理解を深めてもらおうと工夫している。 店舗規模が大きくなればなるほど、米国向けの商品開発も出来るようになる。スリッパなどのアパレル商品は日本と米国向けではサイズに違いがあるため、米国向けの商品に関しては大きめのサイズを作っている。 椅子用クッションも米国向けの商品だ。日本では座布団は流通しているが、ひものついた椅子に取り付けるタイプのクッションはない。今後さらに米国のマーケットに受け入れてもらえる商品開発を進めていきたいと意気込む。現在およそ90%が日本からの輸入、グリーティングカードなど一部の商品は米国で現地仕入れをしている。 日本での価格は100円だが米国では輸入に伴う運賃や関税などを考慮し1・50ドルに設定した。仕入れでいかにコストを抑え、品質を維持していけるかが課題となっている。 「われわれは品質を売っています。所得が低い地域よりもミドルクラスから上の住民が多いエリアで品質の分かる人々に受け入れてもらえると思っているのです」 LAに進出し、ここ2年でようやく増収増益を達成した。「それまでは苦しい道のりでした。米国に進出して10年。今やっとスタート地点に立てたところです。米国のリテールは非常に難しいビジネス。生活に密着した商品が多いためお客さまのニーズを捉え、飽きない品揃えを目指しています」 楽しくショッピングができるよう、照明を明るくしクリーンでゆっくりできる店舗作りを目指している。内装も各店違い、店頭の看板も各店デザインを変えている。 またカスタマーサービスの向上にも務める。「日本はサービスのスタンダードが高い。米国に進出した日本企業は日本の良い部分を米国でも継承し、米国人の従業員教育に生かしていかなければならないと思っています」
村田良英さん略歴
日本で大学を卒業後、米国にわたりミズーリー大学を卒業した。その後日本に帰国し、伊藤忠インターナショナルに勤務。ニューヨークやロサンゼルスで駐在生活を送った。
日本で初めてダイソーの店舗に行った時、衝撃を受けた。「このクオリティーで100円とは。これはビジネスモデルとして面白い」。日本のビジネスコンセプトを世界に紹介する良い機会、挑戦してみる価値はあると一大決心。同社を辞めダイソーの米国進出プロジェクトに参画した。
店舗数を増やし、規模を拡大してきた同社だが、決して順調に来たわけではなかったという。「一時は撤退を考えた時期もありました。LA進出がうまくいかなかったら撤退していたかもしれません」
撤退せずここまで続けて来られたのは米国でのビジネスに大きな可能性を感じていたから。「1度撤退したら2度と米国には戻れないと思っていました。LAは同社のビジネスが弾みを付け、大きな飛躍の場所となったのです」
米国での店舗運営にあたり、日頃からアンテナを張り努力を怠らない。休日も気になる店には必ず足を運び、客として観察。雑貨店だけにこだわらず、新しいコンセプトやその店がある地域性なども分析し、店舗運営に生かしている。
ガーデナ店で米国人従業員に商品説明の確認をする村田上級副社長(右)
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