ホームレス、家族との再会
どこにいるとも知れぬ家族の名前を口にした時だった。こみ上げてくる感情を抑えきれず、男は涙をこらえ、その場から立ち去って行った。 ホームレスとその家族の再会を支援するウェブサイト「ミラクル・メッセージ」が今全米中で話題を呼んでいる。サンフランシスコ在住のケビン・アドラーさんが昨年冬に立ち上げたプログラムで、長年会うことのなかった家族への思いを語るホームレスの姿を録画し、その映像をインターネット上に投稿するというもの。 アドラーさんはスマートフォン片手に全米各地を周り、出会ったホームレスにインタビューをしている。フェイスブックなどのソーシャルメディアを駆使し、映像を見た家族からは投稿後数時間で問い合わせがくるという。目標は100人のホームレスの家族との再会を果たすこと。 冒頭の男性はスマートフォンを向けられると、家族との思い出がよみがえったのか、言葉を続けることが出来なくなった。ホームレスになったいきさつは分からない。しかし語られることのないそれぞれの物語がある。わずか30秒のメッセージだが、そこには家族へのたくさんの愛が込められている。 今ロサンゼルスでもホームレス問題は深刻化している。ロサンゼルス・ホームレス・サービス局が今年行った最新の調査結果によると、LA郡のホームレス人口はおよそ4万4千人。LA市でも2万5千人以上おり、2013年の調査と比べ、どちらも2年間で12%増加した。 事態を受けLA市長は今年9月に非常事態を宣言。約1億ドルを拠出してホームレスへの住宅提供や仮設住宅の建設など支援策を打ち立てた。しかし1億ドルもの資金をどのように調達するかは現在までのところ未定。問題は山積みだ。 これからホリデーシーズンを迎え、家族と過ごす時間が増えてくる。行方知らずとなった身内の安否を長年案じてきた家族にとって再会はまさに「ミラクル(奇跡)」。外は寒いが心の中は温かくなるいくつものミラクルが、この冬も各地で起こってくれることを願う。【吉田純子】
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