ポーターランチ:ガス漏出事故から1年
メタンガス漏出事故から1年が経過した23日、SoCalGas施設前で行われた抗議集会に参加したポーターランチの住民でNPO「Save Porter Ranch」の代表の一人、日比野恭子さん(中央手前)
ロサンゼルス北部ポーターランチにある南カリフォルニア・ガス・カンパニー(SoCalGas Co)の天然ガス貯蔵施設で発生したメタンガス漏出事故から1年が経過した23日、近隣住民らが同施設前に集結し抗議集会が行われた。【吉田純子、写真も】
ガス漏出事故は昨年同月同日に発覚し、今年2月18日に漏出の停止が発表されるまで、4カ月近くにわたりガスが漏出した。この事故でおよそ10万7千トンのメタンガスが大気中に放出され、米史上最悪の環境災害となった。
抗議集会に集まった施設周辺の住民や環境活動家ら
この日の集会には施設周辺住民をはじめ、環境問題活動家、住民側弁護団などが参加した。 事故発覚後、施設周辺の住民からは鼻血や頭痛、嘔吐など健康被害が多数報告され、ガス会社が費用を負担する中、数千世帯がホテルやレントハウスなどに転居し、避難生活を送った。 3600エーカーある同施設敷地内には天然ガス貯蔵用井戸が115基ほどあり、1950年代に作られた貯蔵用井戸もあることから老朽化が問題視されている。漏出事故も1953年につくられた貯蔵施設で発生した。 漏出停止の発表があった後も住民からは健康被害が相次いで報告され、事故後、施設内のほかのガス貯蔵施設からあらたなガス漏出事故が4件発生している。安全性が懸念される中、住民代表グループや施設近隣住民の多くは施設全体の閉鎖を求めている。 オバマ大統領は今年4月に事故原因を究明するための特別調査委員会の設置を承認。カリフォルニア州政府機関とロサンゼルス市やLA郡と連携し、エネルギー省も調査に乗り出した。 今月18日にはガス漏出事故防止を目的に、特別調査委は全米に400カ所以上ある天然ガス貯蔵施設に対し、約40項目の安全勧告を発表した。漏出事故の発生に備え、万が一漏出事故が発生した場合でも迅速に漏出を停止できるようバックアップシステムを導入することなどが盛り込まれた。ポーターランチで起こったガス漏出事故の際は、こうしたバックアップシステムが導入されておらず、作業員はすぐに漏出を止めることができなかった。
相次ぐ漏出事故を受け、施設全体の閉鎖を求め抗議集会に参加する地元住民ら。後方に見えるのがガス貯蔵施設があるサンタスサナ・マウンテン。住宅街はそのふもとに広がる
住民代表グループのNPO「Save Porter Ranch」の代表の一人で同施設からもっとも近い住宅地に住む日比野恭子さんは「今回の事故で病気になった人、ペットを亡くした人など、多くの住民が健康被害にあい、苦しい状況に追い込まれました。中にはポーターランチを去った人もいます」と1年を振り返る。 日比野さん自身もこの1年で7カ月間は自宅を離れ転居先で避難生活を送った。漏出が停止した後も、今年6月まで鼻血や頭痛、咳などが続いていたと話す。 「ガス漏出が停止した後も住民からは健康被害が報告されています。モニターを設置し、メタンガスが漏れていないか24時間体制で監視するようガス会社は行政に命じられましたが、監視していればいいというわけではありません。事故後も敷地内では漏出事故が相次いで発生しています。住民は『今後一切漏出しない環境』を求めているのです」と話し全施設の閉鎖を訴えた。
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