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Writer's pictureRafu Shimpo

二つのふる里

 岡山県倉敷市にあるシニアを対象とした高級コンドミニアム「サン・オークス倉敷」が発行している月刊ニュースレターに羅府新報に関する記事が掲載されている。  レターサイズ4ページのカラー刷り紙面のうち、二分の一ページを割いて書かれた記事は、同所に居住する林昭子さんが「日本語新聞」というテーマでまとめたもの。  日系移民史の簡単な紹介や、そのなかで生まれた日本語新聞の歴史、特に羅府新報の歩みについて触れていて、海外の日系コミュニティー情報が少ない居住者たちの関心を集めているようだ。  林さんはかつてカリフォルニア州モントレーパーク市に住み、引退して郷里の倉敷市に戻るまで、羅府新報一筋に40年働いていた経歴の持ち主。日系コミュニティーの実情についても詳しく、今でも一週間かけて送られてくる羅府新報を随時、共同ラウンジに備え付けて、居住者たちが自由に読めるように手配している。  新聞に目を通した居住者からはさまざまな質問が寄せられ、ロサンゼルス日系社会のようすなどを話し聞かせる語り部のような立場に立つことも。例えば、英語の地名をカタカナで表記する場合、字数が長くなると新聞の見出しにそぐわないので、かつては当て字が多く使われていたことなども解説する。  そのうちでもロサンゼルスの「羅府」は最も知られた表記法だが、ほかにも華府、紐育、伝馬、費府、沙港、塩湖、桜府、桑港、聖林、長浜、散港、讃港、布哇などをクイズ形式で説明すると、盛り上がりをみせるという。ちなみに、前記の地名は首都ワシントン、ニューヨーク、デンバー、フィラデルフィア、シアトル、ソルトレーク、サクラメント、サンフランシスコ、ハリウッド、ロングビーチ、サンペドロ、サンディエゴ、ハワイの表記順になる。  林さんのように、人生の半分以上をアメリカで過ごした後、生まれ故郷に帰って暮らす人は少なくない。また、日米間を行き来して、半年ぐらいずつ生活している人もいる。アメリカを終の住処(すみか)と決めた人も多い。  いずれの場合でも、気持ちの上で「二つのふる里」を持てることになる。心の潤いになっているのだと思う。【石原 嵩】

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