前置詞と表現
日本国外に暮らしていて出くわすのは、表現の違いや文化的背景の違いで言葉が翻訳しにくかったり、言葉もしくは単語自体に意味が無く、使われ方を認知することでしか意味が得られないケースがよくあるということ。 一番厄介なものの一つが前置詞。通常イディオム(熟語)として他の単語と組み合わせて使われて意味を持つ。in、on、out、up等が付くことで同じ単語の意味がまったく変わってくる。 この手の単語で手ごわいのがhang。通常『吊るす』と訳す場合が多いと思うが、熟語となったhang about、hang around、hang by、hang down、hang fire、hang in (there) 、hang off、hang on、hang out、hang over、hang off、hang ten、hang upは『吊るす』とつながり得る部分はあるものの、 意味はまちまちだ。 hangの後に続くonとupでは全く逆の意味だ。さらに付属の前置詞自体の意味とも関係のない意味に変わるケースがある。 こちらに住み始めた頃、一番避けたかったのは電話の受け応え。面と向かう場合には数少ない単語とジェスチャーで何とか伝えることができたが、電話だと言葉だけでの勝負!相手から『Don’t hang up 』とか『Hang on』と言われたときには頭の中が?マークでいっぱいになってしまったことを覚えている。onとupでまったく逆の意味になる。upとdownのように前置詞自体の意味が反映されていれば理解しやすいが、そうでない場合は覚えるしかない。 通常英会話で『hung up』は『 電話を切る』ことだが、なぜ上を意味するupが付くのかをたずねたら、次のような答えが返ってきた。初期の電話機は本体の箱の部分が壁に備え付けられ、電話を切るには耳に当てる部分を本体に戻す。本体は通常壁の高い位置に着けられているので、上に受話器を上げるのでup になったとのこと。その後電話機は卓上に移行し、今では携帯となりポケットの中だが表現はそのままだ。【清水一路】
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