原稿はさっさと…
「1面コラムは2時間以内にさっさと仕上げてー」が口癖の編集長。そんな簡単に書けるわけもなく、毎回産みの苦しみを味わうわけだが、今回はなんだか違う。これは冬休み効果に違いない。 いま札幌市の住宅街にある蔵づくりの珈琲店で原稿を書いている。静かで落ち着いた空間。流れる音楽も、人の会話も、食器が重なり合って響く音も心地いい。コーヒーのいい香りがして、目の前には真っ白な雪景色。時々はらはらと雪が舞う。 ぜいたくな時間と空間。五感が研ぎ澄まされ、なんだか気分も高揚してスイスイと筆が進む。いつもは重いはずなのに。 かつて勤めた会社には「リフレッシュ休暇」という長期休暇制度があった。そして3~4年ごとに定期異動するきまりになっていた。振り返ればいい制度だったと思う。 休暇や転勤によって、頭の中を完全にリフレッシュさせて新鮮な目で物事を見る。そして次の創作活動に反映させる。転勤には一カ所に長く勤めることによるなれ合いや癒着を防ぎ、職場の風通しをよくする効果もあった。すべてはいいものをタイムリーに出すために。 さて、話を日系社会に戻そう。新年号の敬老特集を取材する中で直面したのが取材拒否の嵐。2015年の総括として一人でも多くのリーダーたちに、敬老の問題をどう見て、何が未来への教訓となるのか聞こうとした。 しかし、これに触れることすらご法度であるかのような対応。特に日系3世に対する取材では緘口令(かんこうれい)が敷かれたかのように敬老について語る人は少なかった。今後掘り下げていく価値があるかもしれない。 私の目にはまだいろいろなことが新鮮に映る。でもそれが難しくなったら潮時。大きなアメリカの中の小さな日系社会、その中の長い歴史を持つ小さな新聞社。こういう場所に身を置いているからこそなおさら、しがらみと距離を置いて、新鮮な視点を持って観察する必要がある。まさに参与観察法の実践、社会学出身の血が騒ぐ。 ということで、新年1本目のコラムは早めにさっさと仕上げることができた。なかなかいいスタート。これもやはり休暇のおかげなのかもしれない。【中西奈緒】
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