墓友(はかとも)
日本からの年賀状が年々減っている。電子メールの普及で年賀状を書く人が少なくなったことに加え、天寿を全うする知人、友人が増えているからだ。 そうした中で今年も先輩Kさんからの年賀状が届いた。 「当方は本モノの後期高齢者(83歳)になりましたが、良き先輩やお仲間のお誘いで半ダースを超す公益法人やNPO、学会などの役員仕事をお手伝いしています」 新聞社の海外特派員として中東、欧州をまたにかけ、国際報道で健筆を振るったKさんは、今も日本アラブ協会理事や学会機関誌の編集長として活躍されている。傘寿を超えてもなお現役さながらの仕事をしておられるのを知り、頭が下がる思いだ。 内閣府の「高齢者の日常生活に関する意識調査」(2014年度)によれば、高齢者に「普段の生活で楽しいと感じていることは何か」と尋ねたところ、男女ともに83%が「テレビ・ラジオ」と答えている。2位は女性では「仲間と集まったり、喋ったり、友人・同じ趣味の人との交際」で57%。男性は「新聞・雑誌を読む」の58%だった。 谷野香・全国老人クラブ連合会総務部長は、『朝日新聞』(15年12月28日付国際版)にこう書いている。 「人生後半に地域で集まる場を持てるかどうか、それによって生活の質が違ってくる」 確かにそうだろう。しかし男は老いてくると家から外に出るのが億劫になってくるものだ。ついつい旧友とEメールを交換して親交を温めるぐらいが関の山だ。 昨秋、訪日した際に知人から「墓友」(はかとも)の話を聞いた。 樹木葬墓地に入ることを決めているもの同士が俳句や写経を一緒に楽しみ、旅立ちへの束の間を一緒に過ごそうというわけだ。 近年、代々受け継ぐ家の墓ではなく、共同の供養墓に入る人が増えている。「墓友」はその副産物といっていいかもしれない。 確かにひとりぽっちはさみしい。真の友がほしい。 が、作家・中森明夫はこうも言っている。 「さみしくても大丈夫、なのではない。さみしいから大丈夫なのだ」(新潮新書『寂しさの力』)と。 【高濱 賛】
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