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Writer's pictureRafu Shimpo

夏 真っ盛り

 雲一つない青空を見上げると、南カリフォルニアに住むありがたさをしみじみ思わずにはいられない。今夏は異常気候で蒸し暑い日が続いたりもしたが、日本からの来客に、こんなに快適な気候に文句をいうなと、叱られた。そうだ。砂漠地域で12年を過ごした時は、LAを訪れる度に、天国のような気候に興奮した。あの時の驚きを忘れずにいたい。  おまけに夏はあちこちでアートや音楽の祭典がある。今、ラグナビーチでは恒例のアートフェスティバルが約2カ月間にわたって開かれている。人気のページェントオブマスターズは、舞台で再現される名画の中の人物に本物の人間が入っているという趣向で、チケットは高価だが、大人気だ。人物、衣装、舞台装置、スタッフとたくさんの人と費用がつぎ込まれている。野外劇場で潮風を感じながら、生のオーケストラを聴き、名画の世界のトリックを楽しむのだから、ぜいたくこの上ない。  8月半ばにはコスタメサ市にあるセガーストロムコンサートホールで、総勢400人の演奏者による合唱祭が開かれる。コーラス員240人の半分はプロ。残り半分に素人を募集する。クラシック音楽を地域社会に還元する教育目的である。いつか米国人のプロの合唱団員と一緒に歌いたいと憧れていたが、今年は応募してみた。  どの分野でもプロとアマの違いは歴然で、その行為でお金の対価を得る人の技はすごい。コーラス員も同様だ。歌う時には両隣、後方から温かく豊かな人間の声に包まれる。プロの音程の確かさ、メロディーを流れるように作ってゆく力量。肉声の渦の中に一粒の自分の声が巻き込まれてゆく醍醐味と一体感は、記億に残る貴重な体験になるだろう。  演奏される10曲は米国人が生まれた時から慣れ親しんだ名曲ばかり。その歌を一緒に歌うことで、アメリカの真髄により迫れるかもしれないと、期待が膨らむ。  日本の夏の行事も風情があって恋しい。盆踊り、夜店、綿菓子、ユカタ。年月を経てなお鮮明に記億に残る。二つの異なった夏の文化を味わう時、日系アメリカ人であることを嬉しく思う。 【萩野千鶴子】

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