夏の「風物詩」楽しむ:西本願寺と禅宗寺で盆踊り
浴衣姿で禅宗寺の盆踊りを楽しむ子どもたち
小東京の西本願寺羅府別院と禅宗寺北米別院で11、12の両日、盆祭りが行われた。1街を挟み、両寺院は歩いて1ブロックの立地にあるため、多くの人が両寺院を行き来し、夏の風物詩「盆踊り」を楽しむとともに、先祖の魂を供養した。
西本願寺でゲームを楽しむ子どもたち
両寺院にはかき氷や沖縄名物のドーナツ「サーターアンダギー」、助六寿司、照り焼きチキン・ビーフなどさまざまな食べ物の露店が並び、ファーマーズマーケットのほか、ラッフル抽選会や金魚すくい、コイン投げなどのゲーム、エンターテインメントでは太鼓演奏や民謡なども披露され、来場者を楽しませた。
食べ物の露店でメキシコ料理の「タマレ」や米国のB級グルメ「チリドッグ」が並ぶのはミックス・カルチャーのロサンゼルスならでは。日本の祭りでは決して目にしない食べ物も人気だ。
両寺院とも祭りの運営は檀家だけでなくボランティアスタッフも毎年行っており、収益は寺の運営資金に充てられている。中にはこの日のためサンフランシスコやラスベガス、東海岸から手伝いにくるボランティアスタッフもいるという。
当地で盆祭りが始まった背景には日系人の歴史が深く関わっていると禅宗寺の小島秀明開教師は話す。日系人は入植当時、排日土地法により家を所有することができず、季節労働者として各地で農作業に従事していた。そうした中、日系人が住む場所は広大なロサンゼルスで各世帯離れており、日本のお盆のように寺の住職が1軒1軒檀家の家を回ることが出来なかった。そこで日系人が一堂に寺に会し、先祖に祈りを捧げるため始まったのが盆祭りだった。
禅宗寺で金魚すくいに挑戦する子どもたち
「祖父母が広島からの日系1世で、幼い頃から日本の伝統を重んじる家庭で育ちました。盆祭りにくると懐かしい思いがこみ上げてきます」。ロングビーチ在住の日系3世スー・アサリさん(91)は、禅宗寺のメンバーだった夫が2007年に他界後、毎年盆祭りを訪れる。境内に飾られた約340基の万灯のひとつには夫の名前が記され、この日も亡き夫の魂を供養した。
「ダウンタウンの都会の中にいきなり『昭和』の雰囲気が現れ、まるでタイムスリップしたかのよう。まさかロサンゼルスで祭りが体験できるとは」。西本願寺の盆祭りに初めて訪れたという在米約2年の峰澤歩さん(35)と上田建二さん(25)は驚きながらそう話す。LAにいるからこそ恋しくなる日本の伝統行事を満喫したようだった。
夕刻からは両寺院で盆踊りが催され、浴衣や法被姿で音頭にのって盆踊りを楽しむ老若男女で溢れた。【吉田純子、写真も】
西本願寺の盆踊りで法被に身を包み音頭にのって楽しむ若者たち
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