多種類の料理を一堂に:食欲の秋、900人が満喫
人気のすしは、高級食材の中トロやウニなども振る舞われた
「JRA(米国日系レストラン協会、波多野勲会長)」は、多種類の日本食や地酒などを一堂に集めた大規模の試食会「日本食の祭典」をこのほど、ユニバーサルシティーのホテル、ヒルトン・ロサンゼルスで催した。参加者約900人が、地元の人気和食店の板前が腕を振るった質の高い、すしや各種料理、デザートなどに舌鼓を打ち、食欲の秋を満喫した。
16回目を迎えた恒例イベントは、すしに刺身、天ぷら、ラーメン、うどん・そば、焼き鳥、たこ焼き、和食材を用いた創作オードブル、地酒、ビール、緑茶など、高級食からB級グルメにいたるまで、幅広い料理が会場を彩った。各ブースには、長い行列ができる盛況ぶり。試食に加え、熟練職人による330ポンドのマグロの解体実演やすしの早食い競争、和心太鼓、琉球太鼓、阿波踊りの披露など、エンターテインメントを織り交ぜ盛り上がった。 米航空会社に勤めるジョシュア・ロビンソンさんは、職場の同僚のジェイ・キムさんに誘われて初参加した。「好きなすしと、おいしい料理を食べることができてよかった。たこ(たこ焼き)を生まれて初めて食べて記念
日本酒を試飲するジェイ・キムさん(左)とジョシュア・ロビンソンさん(右隣)
になった」と喜んだ。かつては、アメリカンフットボールの選手で、アイダホ州立大を出てアリーナフットボールでもプロとして活躍したという。引退した今も食事には気を配っており「日本食は健康的なので、よく食べている。今日はいっぱい食べたので、いつか日本に行って、すしをいっぱい食べて、酒もいっぱい飲んでみたい気分になった」と話した。
和食人気の波に乗ろうと、日本から米市場に本格参入を図るメーカーが増えているという。会場には試食会と併催して、各県のグルメ食品会社や蔵元など約8社を束ねたコーナーが設けられた。各地の名産や日本産の調味料や加工食品、お菓子、地酒などが紹介、即売された。
お茶の生産量日本一を誇る静岡からは今回6業者が来米し、同試食会に加え、マルカイ・スーパーマーケットで3日間の「静岡茶フェア」を行ったほか、日系食品問屋や有力日本食店数軒を回り、視察と市場調査を行った。
静岡県庁農林業局・茶業農産課の鈴木陽介主事によると、県が主導し、生産者と流通販売業者を合わせた250社が加盟する「静岡茶輸出拡大協議会」をこのほど発足させ、海外での販売に本腰を入れているという。鈴木主事は、実施した市場調査について「日本茶が認知され、お茶市場は拡大されつつある」と、商機を見いだした。プロモーションは、クオリティーの高い「ふじのくにの静岡茶」として、安価な外国産緑茶との差別化を図るとともに「明確なターゲットを決めて、県内茶業者が協調して新しいマーケットの開拓に努めたい」との考えを示した。
同協議会の米国側アドバイザー、蒲原孝郎氏は最近の抹茶人気について「本来の抹茶は単なるグリーンティーパウダーではない。製法も味もまったく違うもの」と、異議を唱える。普通の緑茶とは一線を画し「芳醇な静岡茶の真髄を高めていきたい」と抱負を述べた。
茶葉を石臼で挽く実演を行い、抹茶を提供した「流通サービス」(本社・静岡県菊川市)の服部吉明社長は、試飲者から「本物の抹茶を飲んで、本当のおいしさを知った」「挽きたては、あまい香りがして、こんなにおいしいのか」などの好評を得たという。視察では「抹茶ボックス」や「アメリカン・ティールーム」などのカフェを訪れ「臼で挽く実演に興味を持ってもらった。反応がとてもよく、『お茶の波』が来ていると実感した」と、手応えを掴んだ様子で米市場進出に意欲を示した。同社の戦略は、玉露と抹茶に絞る。
イベントは入場料を値上げした影響で、昨年より参加者は減ったが、波多野会長は「その分、お客さんにゆっくりと、心地よく食べてもらうことができた。人気のすしは、さほど並ばずにすんだと聞いてよかった」と話した。和食店の店舗数は米国、そして世界で毎年増加しているが、会長は「ただ数だけ増えても内容が伴っていなければダメ。日本食と呼べない料理を出している店も多い」と嘆く。今回の試食会や食品衛生セミナー、技術指導など、日本食の啓蒙というJRAの活動の意義を強調し「地道な活動を続けていきたい」と抱負を述べた。【永田潤、写真も】
「流通サービス」のブースで抹茶を試飲する参加者
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