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Writer's pictureRafu Shimpo

夢の自動車

 三が日を過ぎると正月気分の抜けてしまう日本と違い、各団体の新年会が順次毎週末に催されるシアトルではまだ新年気分が続く。わが家でも、2月に入って友人たちとの新年会を催した。日本酒の乾杯で始まり賑やかに食事するうちに、自動車の進化が話題になった。  最新の話題は、自動車が運転手無しで走ることが出来るという、『自動』自動車。近頃はその関連ニュースを目にするようになり、「これからどうなるのだろう」と興味があるが、まだ現実感はない。  現実的なのは、正面に障害物を認識すると車にブレーキがかかるという装置だろう。装備済みの車は日本で数年前から数種、アメリカでも昨年から発売中。スバルの『アイサイト』など、車に取り付ければ同様な効果を発揮する機器も発売されている。「日本の姉たちは皆、これはいいと買ったよ」と一人が言うのには、もうそこまでと驚いた。  「でもね、いつも思うのだけど」と別の声。「最高制限速度が時速80キロ(50マイル)の日本で、どうして百数十キロも速度の出る車を売るんだろう。制限時速にせいぜい20キロ足すくらいの自動車で十分。一定速度以上出ないようにしておけば、事故の死傷者も少しは減るはずなのに」。(後で調べると、対面通行でない高速道路では最高時速は100キロ、62・5マイル)  各地で救急病院に勤務し、交通事故の悲惨さも毎日のように見てきた医師の発言だけに、実感がこもる。「なるほど、ゴルフカートは速度が出ないように設定されているしね」と一同肯き、名案に思えたことだ。  とはいえ、日本ならともかくアメリカでは、この提案は無理だろう。広大なアメリカには、速度を気にせずに走り回ることの出来る土地がありそうに思える。実際に90年代後半のモンタナ州では、ハイウエーに速度制限が無かったとか。そして、宴果てた後に夫がつぶやいた「でも自動車好きには、目いっぱい突っ走るあの感覚がたまらないんだよね」は、かなりの人の本音らしい。  速度限界つきという夢のような安全対策車は、実現可能性がほぼ無いという意味でも夢の車なのかもしれない。【楠瀬明子】

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