大正クラブ、解散に惜しむ声:活動半世紀、日系社会に貢献
中村達司顧問の音頭で大正クラブ最後の乾杯をする約90人の参加者
大正クラブの50周年を記念した祝賀昼餐会がモンテベロのクワイエット・キャノンで2月18日に催された。大正生まれの15人により、趣味の会として結成されてから半世紀。たくさんの部活動や「健康フェア」を通じて日系社会へ貢献してきた大正クラブは、50年の節目をもって会を終了することを発表した。同クラブとつながりのあった顔ぶれが一堂に会し、昔を懐かしむとともに、またの再会を誓い合った。
屋外からの明るい日差しに照らされた会場に司会の大月ケンさんによる開会の辞が響いた。この50年を振り返り、思い出を心に刻むようにそれぞれが黙とうを捧げる。続いて、日本国風流総師範、豊田国鋒さんによる祝吟、坂東流日本舞踊師範、坂東秀十美さんによる祝舞が披露された。
テーブルを回り、会員や支援者に謝意を伝える杉山会長(中央)
冒頭、杉山敏子会長がユーモアを交えた和やかな口調で同クラブの活動を振り返った。38回を数えた健康フェアについても触れ、降雨や猛暑に関わらず「健康フェアの参加者は列を作って待っていてくれた」と、同フェアの日系社会における存在意義を改めて強調した。「2年前に福岡健二前会長から手渡されたたすきは重すぎたが、皆さんとこうして祝賀ができてとても嬉しい」杉山会長は感慨深く語った。
南加日系商工会議所会頭の山﨑一朗さんは、「大正クラブが解散すると知って驚いている。大正生まれの人たちの心のオアシスとして始まったこのクラブの精神は、形態が変わっても日系社会に受け継がれていく。新たな出発と思いたい」と述べた。
日系社会の医療分野にボランティアで奉仕する医師や看護師、医療関係者らで構成される非営利団体「日系医療協会」(JCHA)から、マエダ医師が代表であいさつに立った。
このほか来賓祝賀として、在ロサンゼルス日本総領事館の松尾浩樹首席領事と南加県人会協議会副会長の水谷ハッピーさんも順に登壇し、50年にわたる日系社会への貢献に謝辞を述べた。
大正クラブの法被を着て記念撮影する白神千里さん(右)と菊地日出夫さん
会場には唯一の大正生まれである白神千里さん(103)の姿もあった。1915年生まれの白神さんは帰米2世。48歳で渡米し、ロサンゼルスダウンタウンで始めたホテル業で成功した。ダウンタウンアソシエーションの会長職も経験し、大正クラブでは料理クラスで日本食を教えていた。周りにいたクラブメンバーは白神さんを「日本食のパイオニア」と呼ぶ。
大正クラブで会長経験のある菊地日出夫さん(95)も白神さんとそろって座った。加州ストックトン生まれで収容所経験もある菊地さんは、長年「米国版カラオケ紅白歌合戦」で実行委員長を務めた。同クラブの芸能部で活躍し、日系社会を盛り上げてきた功労者でもある。白神さん、菊地さん二人は大正クラブの法被を着て記念撮影し、終始にこやかに友人との再会を楽しんだ。
食後、スクリーンに活動を記録した映像が流れ始めると、会場からは時折、笑い声や驚きの声、当時を懐かしむような声が聞こえた。ゴルフ、ダンス、旅行、映画、盆栽、釣り、愛石、カラオケ、そして健康フェア。どの画像にも真剣なメンバーの表情や笑顔、活発な活動風景が映し出されている。
2013年の大正クラブの健康フェアで血液検査を受ける参加者
メリノール教会での健康フェアの記録は、それ自体が貴重な財産と言える。血液検査、歯科、眼科、視力検査、一般内科、心臓科など、各部屋にそれぞれ医師が待機し、さまざまな年齢層の参加者が列を作る。このような活動が、クラブの解散とともに失われるのは非常に残念というほかない。
健康フェアで行われた検眼
山﨑さんは「健康フェアはまさに総合病院。地域の人にとってはもちろん、医師にとっても広告になり双方に利点があった。大正クラブの培ってきたノウハウや投じてきた設備を引き継ぐことができる団体があれば良いが」と解散を惜しんだ。
「明治110年を記念して作られた会も、3月末をもって活動の幕を降ろす。できることなら最後の会長にはなりたくなかった。とても切ない決断だったが、今日を大正クラブの『卒業式』とすることで、また明るい未来がやってくるのでは」杉山会長は最後の最後のあいさつでこう語り、「卒業生代表」として日系諸団体に謝辞を述べた。
この後、鈴木博久顧問が、同クラブ代表で杉山会長に感謝状を贈呈した。サプライズを受けた杉山会長はユーモアで対応し、会場は和やかな雰囲気で50年最後の祝賀会を終えた。
鈴木顧問より感謝状を手渡された杉山会長(左)
同クラブは1983年から1992年の間に約1万1500ドルを日系社会に寄付してきた。2009年には南加日系商工会議所より、団体コミュニティーアワードを授与されるなど、その活動に対する評価も高い。 すべての日程を終了し、一息ついた杉山会長は寂しいながらもホッとした表情で取材に答えた。「時代とともに会員の高齢化が進み、それに伴いボランティアも減少、健康フェアの場所の確保や保険など、問題が多い中で継続は不可能と昨年夏に決定した。年末の総会で大正クラブを終了することも承認され、3月をもって解散となる」 日系のパイオニア団体が一つ姿を消す。大正クラブの大いなる意志を継いで、健康フェアやボランティア活動を引き継ぐことができる団体が新たに登場するよう、望む声はやまない。【麻生美重】
大正クラブの桜マークが染められた法被
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