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Writer's pictureRafu Shimpo

子ども食堂

 日本はいまかつてないほどのラーメン・ブームだ。とくに全国にチェーン店を展開する博多とんこつラーメンの「一風堂」はどこの店も長蛇の列らしい。  久しぶりに日本に一時帰国し、東京・世田谷の親戚付き合いをしている友人宅に旅装を解いた。  昼間ラーメンが食べたくなった。勇んで出かけた近くの「一風堂」は、ご他聞にもれず、待ち時間は30分から1時間。諦めて、別のラーメン屋に入った。「麺処大山」という猫の額のようなちっぽけな店だ。  四人掛けのテーブルが4つと数人しか座れないカウンター。入口に券売機があり、すべてセルフサービス。短い髪に口ひげを生やした長身の、年の頃なら30代半ばの男性が一人、調理場で忙しげだ。席に座って周りを見渡すと、壁に貼ってある張り紙が目に入った。  「『今晩のご飯はボク一人なんだ』『お母さんがお仕事の日はお弁当を一人で食べる』 そんな君たちへ。金曜日の夜は『子ども食堂』の温かいご飯を食べに来ない? 午後5時から8時まで。待ってるよ」  「子ども食堂」とは、主人兼従業員の大山泰裕さんが昨年6月から始めたボランティア活動だ。「建設業をやってたんですが、椎間板ヘルニアになって力仕事ができなくなって。それでラーメン屋を始めたんです。でもなにか人のためになることもしたくなって」  子どもたちは無料。付き添いの大人は100円(1ドル14セント)。メニューはカレーライスやスパゲティ、タケノコご飯と、各週ごとに変えている。資金は売上金の一部を充てている。金曜日夜の営業収入はむろんゼロだ。最近、善意に共鳴してくれた人が野菜や肉を寄付してくれるという。  大山さんは「チャレンジ・ラーメン」もやっている。20分間に三人前のラーメンを平らげた人はタダ。食べきれない人からは1500円(13ドル)を徴収する。近くにある体育大学の学生たちが競って挑戦しているらしい。  全国制覇を果たした「一風堂」の繁盛ぶりをしり目に、「麺処大山」に迷いはない。〈ただ儲けるだけじゃつまらない〉。それが生きがいになっている。【高濱 賛】

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