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Writer's pictureRafu Shimpo

子供たちが大変!

 文具店からHBの鉛筆が消えつつあるそうだ。需要が少ないから作らないのだと。  東京の小学校では、入学のしおりに、鉛筆はBか2Bを用意するよう指定しているという。原因は子供たちの筆圧が弱くなっていて、HBで書いた文字では薄くて、先生が判読できないのだそうだ。高学年になると少し改善されるものの、そのままBを使い続ける子が多く、筆箱の中にHBを見つけると、取り上げてしまう親もあるらしい。  私はすごく力をいれて文字を書く癖があり、学生の頃のノートはHや2Hの堅さの鉛筆を愛用していた。Fも好きだった。じゃあ、そのHなどはもう、幻の鉛筆になっているのかも知れない。今では10Bという濃さの鉛筆まで開発されているという。  3歳や4歳でパソコンやスマホで遊ぶ子供がいると聞く、母親たちはそれを誇らし気に話しているが、そういうことが一因だとは考えないのだろうか。もしかしたら正しい鉛筆の持ち方を教えていないかもしれない。力を出すことは思考力につながるというのに、これこそ「もったいない」ことだ。  指だけでなく、体力も落ちていて、足の裏を地面につけたまましゃがむという動作が出来ない子が多いらしい。テレビの向こうでは、小学生がしゃがもうとして、丸めた体ごとくるんと後ろにひっくり返ってしまっている。あーあ、全校一斉にマラソンや縄跳びなど、体力づくりに取り組んでいる一方で、大変なことになっているんだな、この頃の子供たちは。私たち世代は何も特別なことはしてこなかったけれど…今さらながら、和式トイレのありがたさに気付いたことだ。  何年か前、右手をけがして、大事をとって使わなかったら、傷が癒えても指が曲がらず、拳がにぎれなくなった。もらったおつりが指の間からぼろぼろこぼれるのを見て凍り付いたのを覚えている。必死のリハビリに1年かかった。  人間の体は神秘である。少々傷ついても再生するし、鍛えれば強くもなる半面、使わなければその機能は確実に退化することを身をもって体験した。便利さと引き換えに、人間がその機能を一つずつ失っていくとしたら皮肉な話だ。【中島千絵】

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