小東京とOCで全23作品上映:第13回ロサンゼルス日本映画祭
アフターパーティーで乾杯する桃井かおり監督(中央)と八木景子監督(手前右隣)ら
日米メディア協会(JAMA、朝倉巨瑞代表)主催の、第13回ロサンゼルス日本映画祭(JFFLA、鈴木智香子映画祭実行委員長)の閉会セレモニーがこのほど、小東京の全米日系人博物館で催された。オレンジ郡と小東京の2カ所で2日間にわたって開かれた今年の映画祭では、長編短編を含む全23作品を上映。作品賞を受賞した上田慎一郎監督の話題作「カメラを止めるな!」と監督賞を受賞した桃井かおり主演、脚本、監督の「火 Hee」が満席となるなど、同映画祭関係者にとって最上の結果を生み出した。
レッドカーペットに現れた「ラーメン食いてえ!」のスタッフ。左から鈴木仁行プロデューサー、熊谷祐紀監督、林あゆみプロデューサー
閉会セレモニーが近づいた夕刻には、全米日系人博物館の上映会場前に設置されたレッドカーペットに各作品の監督や出演者、プロデューサーが順次登場した。詰め掛けた観衆の見守る中、桃井監督、「ラーメン食いてえ」の熊谷祐紀監督、「明日にかける橋」の太田隆文監督、ドキュメンタリー映画「ビハインド・ザ・コーブ」の八木景子監督、「アラフォーの挑戦 アメリカへ」主演の松下恵さん、熊本映画「うつくしいひと」代表のくまモンらがカメラに向かった。
前日の「ラーメン食いてえ」上映後には熊谷監督ら製作陣が記者らの質問に答え、製作の舞台裏を紹介。標高の高いキルギス共和国での撮影時、高山病になるスタッフが続出。困難を極めた。また、参加したその土地の出演者のほとんどが演技とは無関係の一般人だったことから、演出に工夫を講じた例などを挙げた。LAで本作の初公開を迎えたことから、熊谷監督は「これをきっかけに、海外を意識して製作を続けたい」と語った。
ほぼ満員の会場で盛り上がりを見せた閉会セレモニー
今回の映画祭では200席ほどの劇場で2度にわたって入場券が完売となった。そのうちの1本は、東京都内の2館で6月下旬に公開されてから話題となり、連日満員の大ヒットとなった「カメラを止めるな!」。SNSなどで「時の作品」となった上田慎一郎監督のデビュー作には観客が列をなして集まった。映像関係の仕事をするカール・フィーラーさんと大脇綾華さんは上映後、「ストーリーがこんな展開になるとは思いもよらなかった。約300万円の低予算でよくここまで作ったなと思う」と、やや興奮したようすで感想を語った。
完売2本目の作品は、桃井監督が主演と脚本も手がけた「火 Hee」。2016年に世界で公開され、ベルリン国際映画祭など世界有数の映画祭で上演されてきた。LAでの一般公開は初めてということに加え、上映後に監督のQ&Aが行われたことから、映画祭のフィナーレを飾るにふさわしい賑わいとなった。Q&Aはゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)会員の中島由紀子さんとの間で行われ、桃井監督の作品に対する思いなどが来場者へ直接届けられた。
「火 Hee」の上映後、Q&Aをする桃井監督(右)とHFPA会員のLA在住映画ライター、中島由紀子さん
閉会セレモニーでは鈴木映画祭実行委員長、JAMA代表の朝倉さんらがあいさつ。03年に「チャノマフィルムフェスティバル」としてスタートしてから13回を迎えた同映画祭は、単に日本映画を上映するだけでなく、日本を題材とした海外の作品も合わせて紹介するかたちへ発展し続けている。毎回の規模は違っても、ボランティアの力だけで継続していることは、この映画祭の最大の特徴といえる。 作品賞に選ばれた「カメラを止めるな!」の上田監督と出演者からは、受賞の喜びを伝えるビデオメッセージが届いた。監督賞に選ばれた桃井監督は「いろいろな映画祭を回ったが監督賞は初めて。とても嬉しい」とスピーチし、記念品の盾を高々と上げた。 セレモニーの後はミヤコホテルへ会場を移し、招待客とボランティアらがアフターパーティーに参加した。実行委員を含む約40人のボランティアはお互いをねぎらい、約1年かけて準備してきた映画祭の成功を祝った。 鈴木実行委員長は映画祭の終盤、安堵した表情で「映画祭は大成功」と評価。「ほとんどが学生ボランティアでメンバーが入れ替わるため、規模を維持することはなかなか難しい」としながらも、「経験あるボランティアがこれからもうまく導いてくれるだろう」と述べ、今後の期待も含めた。【麻生美重、写真も】
各賞は次の通り。( )内は監督
▽最優秀作品賞「カメラを止めるな!」
▽最優秀監督賞「Hee 火」(桃井かおり)
▽特別感謝賞「アラフォーの挑戦 アメリカへ」(すずきじゅんいち)
▽短編公募賞「Home」(竹中響子)
▽長編公募賞「戦争を忘れずにお互いを許す」(ポール・マーティン、ブラッド・ベネット他)
▽チャノマ映画賞 「はなちゃんのみそ汁」(村岡克彦プロデューサー)
▽公平なドキュメンタリーへの感謝「ビハインド・ザ・コーブ」(八木景子)
▽感動と涙への感謝 「明日にかける橋」(太田隆文)
▽日本食普及への感謝 「ラーメン食いてえ!」(熊谷佑紀)
▽熊本復旧活動への感謝「うつくしいひと」(行定勲)
ボランティアメンバーと乾杯する鈴木千香子映画祭実行委員長(左)
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