少なくなったクリスマスカード
今年もクリスマスカードや年賀状の季節となった。振り返ると人並みにたくさんのことがあった長い1年であった。積み重ねてきた仕事により一層精進することの外に、毎年何か新しいことに挑戦し、充実した時間を過ごしてきたつもりだ。それなのにクリスマスカードを書き始めてハタと気が付いた。以前よりその数がはるかに減ってしまった。あて先は30年以上の付き合いのある人たちだけ。仕事上の付き合い、若い人との付き合いは、皆、メールで済んでしまうということもあるが、それにしても少ない。 本が売れなくなった、5年後には出版ビジネスは利益が出なくなるのではと危惧されて久しい。が、思考を掘り下げるには、やはり紙の本が不可欠である。本は細々でも生き残ってほしい。クリスマスカードや年賀状も同様だ。受け取るカードはことの外、嬉しいものだ。直筆を見れば、相変わらず達筆だとか、筆圧が落ちたな、字が震えているご病気かしら、などと意外に分かるものである。その人の体温が伝わるものがなくなると、人と人との交わりも希薄になる。 銀行に行っても、行員が極度に少なくなった。以前はたくさんの人がきびきびと働く姿があった。ベテランは顧客の名前を覚え、声を掛けてくれる。だから同じ銀行を使いビジネスが継続した。今はガランと無人の窓口が並んでいる。窓口で「これはインターネットでできますよ」と注意されるが、目前で人にやってもらった方が安心だ。他の質問もして、問題が同時に解決できる。顔の見えない相手とメールのやり取りで時間をつぶすより、余程効率がいい。用事をかたずけ、人とも話せた。昨今これは笑い話ではなくなってきた。 隣人の郵便局員は郵便物が減り、フルタイムで働けなくなったとこぼしている。時代の波には抗(あらが)えないが、テクノロジーの発達はたくさんの人の職場を奪っているのも現実である。高度の専門職か、どうしても人間の手を必要とする職だけが残り、中間職がなくなるかもしれない。そんな不安を抱えながら、今年も1年の一区切りのごあいさつを丁寧にクリスマスカードにしたためる。【萩野千鶴子】
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