幸せは心で感じるもの
脳科学の立場からの説明によると、私たち人間が感じる幸福感とは脳内に分泌されるドーパミンが引き起こす化学反応によるものだという。分泌されるドーパミンの量が多ければ多いほど、より幸福感を感じるのだそうで、結局、幸福感の強弱は脳内ドーパミン分泌量の多寡によって決まるのだそうだ。 脳の中のドーパミンという特定物質の量によって人間の幸不幸の感情を左右されてしまうとは、科学の立場からは正しい説明なのかもしれないが、人間の感情はそんな単純な物理的説明で割り切れるものなのだろうか。 私には科学的説明に反論する材料も根拠も持ち合わせていないが、前記の説明だけでは納得しづらいところがある。なぜなら私たちは心を持ったヒトという情感あふれた生命体であり、単なるモノではなく、無機物同様に扱えないものだからだ。 私たちはもっと人間らしく、心ときめくロマンティックな存在でありたいと思う。それを化学物質の分泌によるとの結論では生きている意味すら喪失しかねない。人間の心とはそのくらい摩訶不思議な存在なのではないだろうか。 私は若いころ、日本の会社に就職し、勤務先は諏訪(長野県)だったが、真冬を除いて会社の休日はほとんど信州の山か高原を歩いていた。山を登っている時は「なぜ、こんな苦労して登山などしているのだろう。もう金輪際こんなことはやめよう」と思ったことはしばしばだった。でもまた次の休日になると足は自然に山に向かっていたのだった。これも『ドーパミン』のなせるわざといえばそれまでだが、それは今でも私の青春の思い出として忘れられない大切な宝であり、なにものにも代えがたい人生の貴重な1ページとして心に刻みついている。 私も科学の真実は尊重するが、喜怒哀楽の感情はやはり崇高な心の問題としてとらえ、心の持ち方こそが大切なのだと強調したい。もっとも、その心の持ち方次第で脳内ドーパミンの分泌量が増減するということならば、私の主張は科学的説明を情緒的側面から述べたに過ぎないものであり、結局、同じことを述べているにすぎないのかもしれない。【河合将介】
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