徳島・祖谷の観光を促進:「隠れた日本」の魅力伝える
祖谷を昨年訪れた参加者によるパネルディスカッション
徳島県の観光促進のためにロサンゼルスを訪れた県と三好市、民間業者で構成する訪米団がこのほど、旅行業界関係者を対象にしたセミナーを各所で開いた。熊谷幸三副知事を団長とする一行12人は、鳴門の渦潮や阿波踊りに加え、「隠れた日本」と一押しする「にし阿波・祖谷(いや)」の雄大な自然や食文化などの魅力を伝えた。
熊谷副知事によると、四国の中心に位置する祖谷は、1000年の歴史の中で他との地域交流を絶ったため「独自の文化、習慣が形成された」という。国内でも知る人は少なく「日本の三大秘境」と呼ばれる所以である。標高2千メートルの山々と深い谷に囲まれ「厳しいながらも、美しい自然に囲まれた特有の歴史と文化がある」と強調する。
民間から参加したホテル「祖谷温泉」社長の植田佳宏さんは、北米からの観光客の誘致に熱い期待を寄せる。過去2度催したセミナーに参加した旅行会社が、実際に顧客を祖谷に送っているといい「実績があるので、信頼できる。あらためて知らせて、もっと来てもらえるよう直接にお願いに来た」と話した。現地に赴いてのキャンペーンについては「生の声を聞くことによって、何が喜ばれ、何が不足かなどを知ることができる。課題を解決すれば、次のステップへの手掛かりになる」と、来米の重要性を強調した。
阿波踊りを踊る参加者
堀之内秀久総領事は、公邸に地元の旅行社とメディアを招いた徳島観光セミナーを開いた。訪米団が、祖谷の見所を紹介したほか、昨年に祖谷を訪問した雑誌「ナショナルジオグラフィック」のライターや写真家、旅行社スタッフなどが、体験を披露した。
総領事は参加者に向け、日本政府が行う観光促進について、年に1000万人という訪日客を達成し、東京五輪・パラリンピック開催の2020年までに2千万人という目標を掲げていることを紹介。訪日客の特徴として「東京、大阪、京都、広島を訪れるが『本当の日本の深い所』には行かない」と話し、「徳島は日本の秘宝と言われ、隠された所にあるので知ってほしい。食や地酒もおいしい」と力を込めた。
熊谷副知事は「祖谷は、東京でもなく、大阪でも北海道、沖縄にもなく、『もう1つの日本』『隠れた日本』として評価が高まっている。にし阿波のファンとして、アメリカはもとより、全世界に魅力を発信してほしい」と呼びかけた。
訪米団の1人で、在日米国人のアレックス・カーさんが、スライド写真を使って紹介した。カーさんは、日本についての多くの著書を持ち、国内外に日本の魅力を発信、特に地方の紹介に定評がある。滞日50年以上の中で、祖谷に感銘を受け、元禄時代からという築300年の古民家を購入した。一般客が宿泊と見学ができるようにリフォームすると、茅葺き屋根や囲炉裏などの内装が人気を呼び、多くの観光客を引きつけている。
カーさんは、祖谷の農村や自然について「12世紀から時が止まったようで、タイムカプセルの中にいるみたい」「峡谷は、緑に囲まれた『日本のグランドキャニオン』」などと表現。また「自然以外に何もないことが、祖谷の最大の魅力でもある」などと、独特の言い回しで伝えた。
参加者には、郷土料理のブリのしゃぶしゃぶ、ハモの湯引き、豆腐とコンニャクに味噌だれをつけて食べる「でこまわし」などが振る舞われた。これらの「ソウルフード」に全国の98%を占める生産を誇る、すだちを絞り料理の味をいっそう引き立てた。阿波踊りが披露され、参加者も輪に加わった。
熊谷副知事は、当地でのPRを総括し「参加者の皆さんが、われわれの説明に興味を持って聴いてくれたので、成果が表れると思う」と手応えを掴んだ面持ちで話した。日本政府が掲げる訪日客2千万人という目標で、各地の役割について「地方創生の切り札の1つが観光振興である」と意欲を示す。徳島と祖谷の観光促進は「東京、富士山、京都というゴールデンラインの延長線上(として誘致するの)ではだめ」と力説しながら「祖谷の特徴の『隠れた日本』『もう一つの日本』を前面に押し出した促進に努めたい」と、他との差別化を図る考えを示した。【永田潤、写真も】
湯引きしたハモを試食する参加者
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