感動か絶句か?
2017年の初笑い。落語家・立川志の輔さんの高座を聞きに行った。普段から落語に触れる機会もなければ、生で見るのも初めて。師匠の話芸に完全に心を奪われた。 最近のニュースや世相など身近な話題で心をつかみ、突然エンジンがかかったようにスピード感を増して本題へ。まるで別の人が演じているかのようで、舞台に一人の噺家しかいないことを忘れさせる。 夫が妻を質に入れようとしたり、ゆるキャラの着ぐるみの中にうっかり入ってしまった市長が出られなくなったりと、なんともナンセンスな設定の新作落語で涙が出るほど笑わせ、最後は古典落語の名作「紺屋高尾」でほろりとさせる。 扇子や手ぬぐいなどわずかな道具だけを使い、小さい座布団の上で何人もの人物を演じ分ける。何千人もの観客が注目する舞台。みなを喜ばせるのは並大抵の修業や稽古では務まらないはず。ただただ感動するばかりである。 さてさて、気になるこちらはどうだろう。今月20日、全世界が注目するトランプ次期大統領の就任演説。 年明け早々、ツイッターで一方的に発信される威嚇や批判の言葉の数々に、アメリカ国内だけでなく日本も振り回されている。トヨタ自動車がメキシコに予定している新しい工場建設についてけん制。それを受けてトヨタは今後5年間で100億ドルを投資すると発表して顔色を伺う。まだ就任前で、具体的な政策も伴わない発言ゆえ果たして実行されるか疑問が多い。それなのに、多くの人たちが日々、彼の言葉に戦々恐々としているこの異様さ。 8年前のあの日が懐かしい。黒人初のオバマ大統領の就任演説。世界中の人たちを感動させ、希望を与える歴史的なものだった。日本では英語の参考書にもなり数多く販売された。先日の退任演説も「Yes We Can」で結び、これからも希望を持ち続けようと語りかけ涙をそそった。 1月20日、どんな歴史が刻まれるのか。8年前と同様に感動的な演説か、それとも批判が殺到する独善的で史上最悪のものに終わるのか。ハラハラして目が離せそうもない。平静を保つためにも、絶句する心の準備だけはしておこう。【中西奈緒】
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