敬老売却問題:カマラ・ハリス州司法長官 「当事者と話し合う用意がある」
記者会見を兼ねた特別集会で、「守る会」代表のチャールズ井川氏(左から2人目)、マキシン・ウォータース連邦下議(同3人目)とジュディー・チュウ連邦下議(同6人目)ら
敬老売却問題に関し12日、カマラ・ハリス州司法長官から直接、「敬老を守る会」の代表に電話があったことが分かった。ハリス氏は自分の職務権限内でエスクローの扱いに対応できること、関係者たちとの話し合いの場をもうける考えがあることなどを伝えてきたという。【中西奈緒(写真も)、モニエ中地美亜】
オバマ大統領の最後の一般教書演説が行われた12日(火)、守る会の代表チャールズ井川氏はワシントンDCからの連絡の対応に追われた。
マキシン・ウォータース連邦下院議員(民主)、そのスタッフで敬老問題を専門に担当しているDCオフィスのジョセフ・スワイス氏、そしてハリス州司法長官直属のスタッフらとの事前の調整のあと、ハリス氏自身が直接、井川氏に電話をかけ30分以上にわたって話をしたとされる。
ハリス氏はこの敬老のケースを放っておくことは出来ないこと、自分の権限でエスクローを閉じる時期を延期させることができること、いまの法律上では売却を覆すことはできないが、敬老とパシフィカ側に働きかけ、さまざまな可能性について話し合いの場をもうける用意があること、などについて伝えたという。
譲歩の姿勢を示しはじめたともとれるハリス氏に対して、井川氏は「敬老の売却を受け入れることはできません。敬老は私たち日系人にとっての先祖から受け継いだ大切なもので、売却は私たちの一部を売るようなもの。守る会としてこの考えは揺るぎないものです」とあらためて伝えたという。
壁側に立つ右から2人目が弁護士チームのリーダーでユダヤ系権利擁護団体ベット・ジべック副社長のエリサ・バレット弁護士
「守る会」は今週、正式にNPO(非営利団体)となり、無料で弁護活動を行う3つの弁護士事務所や介護ホーム支援団体と密接に協力しながら、ハリス州司法長官や敬老シニアヘルスケアを訴える裁判なども含め、より具体的なアクションに出ている。
その3つの弁護士事務所はベット・ジべック(Bet Tzedek ヘブライ語で「正義の家」を意味する)、ロサンゼルス・リーガル・エイド・ファンデーション(Legal Aid Foundation of Los Angeles)、大手弁護士事務所のギブソン・ダン・クラッチャー(Gibson Dunn and Crutcher)、介護ホーム支援団体はカリフォルニア・アドボケイツ・フォー・ナーシングホーム・リフォーム(California Advocates for Nursing Home Reform)。
特別集会の後、残って打ち合わせをする弁護士チームと守る会の一部メンバー
この4つの団体がチームを組んで取り組み、ユダヤ系の権利擁護団体ベット・ジべックの副社長エリサ・バレット弁護士がリーダシップをとり、「守る会」メンバーのロン・ヒラノ弁護士が4団体の調整役をつかさどる。こういった団体からの支援はウォータース下議の全面的なバックアップにより実現した。
すでに、法的なアクションはとられている。12日には、カリフォルニア州公正雇用住宅局が、敬老シニアヘルスケアとパシフィカ社に対して「言語、身体、精神に障害を持っている高齢者に対する違反がある」という通達を出したばかりだ。公正雇用住宅局の弁護士とヒラノ弁護士が、敬老の居住者たちにインタビューをして明らかとなったもので、敬老そしてパシフィカ社の返答を待ったうえで、近く裁判所に提出されることになっている。
「守る会」は今後の具体的な行動について、弁護士チームとともに話し合いを重ねている。メンバーの中にはハリス氏が提案する「交渉のテーブル」につくことは、会の妥協を意味していると考えて反対する人もいる一方で、交渉を進めながら裁判を進めていける選択肢もあるということから、エスクローを延期するためにも交渉を始めることに賛成の人もいるという。16日(土)の「守る会」の定例ミーティングで、ハリス氏にどのような返答を公式にするか話し合う予定だという。
敬老問題を専門に対応するスタッフを派遣したり、弁護士事務所の応援を取り付けるなど、全面的に守る会をサポートするマキシン・ウォータース連邦下議
マキシン・ウォータース下議は「交渉のテーブルにつくのはいいこと。そうしないと何もはじまらない」という見解をしめしているといい、弁護士チームのリーダーであるバレット弁護士は羅府新報のインタビューに対し「今後、州司法当局を進行役にすえて、敬老と守る会との直接的な対話を持ちたい」と話している。
14日にガーデナ市の教会で行われた記者会見を兼ねた特別集会ではマキシン・ウォータース連邦下議(民主)、ジュディー・チュウ連邦下議(民主)らがこれまでの経過を報告するとともに、今後も敬老売却問題解決のために最善を尽くしていくことを力強く表明した。
一方、敬老のゲリー・カワグチ理事長は「売却に反対するグループは敬老が抱えている問題点のすべてを公にすることなく、依然として人びとを焚き付けていることに失望している。売却に関する資料や記録、経過などはすべてKeiro.org で2年以上にわたり公開されているので、誰でも見ることが可能だ。敬老施設を守るためには、敬老を売却するのが唯一の選択肢である」との趣旨を15日付けの羅府新報あてEメールで述べている。
また、守る会は23日(土)午後1時から、「コミュニティーの声を聞く集会」を小東京に隣接するセンテナリー合同メソジスト教会で開催する。詳細問い合わせは佐藤さん(日本語で562・547・5005)またはローラさん(英語で310・836・1610)まで。
集会でスピーチをし、ウォータース連邦下議に感謝の気持ちを伝える池田啓子氏(臨床心理博士)
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