新作ねぶた、着々と制作進む:金太郎の勇姿に鯉の滝登り
新作ねぶた「公時」の制作メンバー。前列左端2人目から秋山さん、岡崎さん、右端が手塚師。後列は左から3人目が竹浪師、右隣が豊島会長
「見送り」と呼ばれる、ねぶたの背面に和紙を貼る作業
二世週祭やハリウッド・クリスマスパレードで披露し、人気をさらう「青森ねぶた」。その新作の中型ねぶたがハリウッド・パレード(11月26日)でのデビューを目指し現在、小東京の青森県人会館で着々と制作が進行している。青森のねぶた師らと日系社会のメンバーの合作で、両者は心を一つにし、固い絆をいっそう強めている。
竹浪比呂央師ら制作者6人を招いたのは、LAねぶた囃子保存会(豊島年昭会長)で、中型ねぶたは2台目の所有となる。レッドカーペットが敷かれたハリウッドで、10万人超という観衆を前に勇ましい姿を見せる。
竹浪師によるLA日系社会への作品提供は、2007年と15年に次ぎ今回が3作目。今作のテーマ「公時(きんとき)」は、平安時代後期の武士の坂田公時がモデル、といってもイメージは沸いてこない。だが「〽ま〜さかり、か〜ついで、き〜んた〜ろ〜お〜」と耳にすれば、知らぬ人はいない。公時は元服しても、親しみを込めて幼名のままの金太郎と呼ばれ続けまた、熊にまたがった姿は五月人形の題材によく用いられている。
作品では、大きなまさかりを振りかざし、にらみを利かせた金太郎と横並びに、巨大な鯉が水中から勢いよく飛び出し、躍動感を巧みに描写。竹浪師によると、鯉は天に上り龍に姿を変えるといわれ、金太郎のような健康な子供の成長の願いを込めており「若き公時の勇姿と、出世魚の鯉の滝登りに、ロサンゼルスねぶたのさらなる発展を祈りたい」とエールを送り、渾身の力を込め、作品に命を吹き込む。
紙貼りや針金のフレームの微調整、LED電球の取り付けなどを行う制作者
ねぶた囃子のメンバーが、紙貼り作業で活躍している。ともに青森出身で、太鼓を叩く岡崎禮子さんと、笛を吹く秋山三保子さんは、ねぶた師の手塚茂樹さんらの指導を仰いで腕を上げ、女性ならではの、しなやかな手つきで針金のフレームに和紙を貼る。岡崎さんは「難しい個所(曲面など)をきれいに仕上げた時がうれしい」といい、秋山さんは「ねぶた好きのみんなで力を合わせて作るのが楽しい」と、喜びを共有する。青森文化に誇りを持つ2人は「ねぶたがアメリカで広まることが何よりもうれしい」と口をそろえる。手塩にかけた作品との「共演」を心待ちに、演奏の稽古にいっそう身を入れることだろう。
竹浪師によれば、4日から開始した制作は13日昼の時点で、全体の7割ほどが済み今週末には紙貼りが終わる見込み。墨を入れて色を塗り、19日の完成を目指す。
繁盛するすし店経営の多忙な合間を縫って作業に加わる豊島会長は、ハリウッドパレードには新作を、来年の二世週祭には今作と2年前に作った「津軽海峡 義経渡海」の2台体制で臨む考えを示しており「金太郎と鯉のねぶたは、青森の中型よりも少し大きいということで、青森並みの賑やかさになりうれしい。すごいパワーが生まれると思うので、みんなに見てもらうために頑張りたい」と、抱負を述べた。【永田潤、写真も】
ねぶたの裏面に「雷神」を揮毫する竹浪比呂央師
竹浪比呂央師(右)は、日系社会に3作品目の「公時」を提供する
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