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Writer's pictureRafu Shimpo

日馬富士と安美錦

 異郷で見る相撲のテレビ実況中継に一喜一憂する15日間だった。  日馬富士の暴行事件があったり、白鵬の抗議ジェスチャーがあったり、一年を締めくくる大相撲九州場所は大揺れだった。  その中で、一服の清涼剤は、一年ぶりに十両から幕内に返り咲き、勝ち越して敢闘賞に輝いた安美錦(39歳、伊勢ケ濱部屋)だ。旭天鵬引退後は最高齢だ。  祖父も力士、実兄は前頭13枚目までいった安壮富士(11年の八百長問題で引退勧告)。伊勢ケ濱親方(元横綱旭富士)は父の従兄弟の息子。  横綱以下の力士が横綱に勝つことを金星というが、安美錦は現役力士中、最多の金星力士だ。横綱の貴乃花、武蔵丸、朝青龍、白鵬を破って金星4つを取っている。貴乃花は安美錦に敗れた後、引退した。  最後まで粘りの相撲を取り、もつれた相撲になることが多く、「行司泣かせの力士」と言われてきた。「技巧派」「業師」「相撲巧者」の異名でならした。土俵を下りると、穏やかな人柄でいつも笑顔が絶えない。後輩力士への面倒見もよかったらしい。  激しい稽古を続ける中で左アキレス腱を断裂し、昨年、十両に転落。一時は幕下まで落ちかけた。  「幕内で通用するか、しないかという不安がいっぱいあったし、家族も一緒に闘ってくれた。いつもと変わらず接してくれて…。気を遣わせて…」  千秋楽まで一生懸命支えてくれる家族の姿を思い浮かべて、安美錦は千秋楽のインタビューで涙を流した。  夫人は元女優の白木絵莉さん。早稲田大学法学部卒の才媛だ。弟弟子の日馬富士の横綱昇進祝賀会の席で出会い、4カ月後にスピード婚した。  皮肉なことに「キューピッド」だった日馬富士は今引退の危機にさらされている。大相撲は、まさに力士たちが悲喜こもごもに織りなす人生模様そのものだ。 【高濱 賛】

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