星港(シンガポール)の街かどで ⑧:在シンガポール日本大使館参事官 伊 藤 実 佐 子
JNHS入会式後に全員集合。多文化共生そのものの顔ぶれ
ここシンガポールで最もアメリカらしい風景に接することができる場所のひとつに、アメリカン・スクールがある。幼稚園児から高校生まで、4千人の生徒が100台のスクールバスで通学してきている。
国境の町として知られるウッドランドは、橋を渡ればすぐマレーシアである。この学校は、米国外に存在するアメリカン・スクールのなかで、最大規模のものという。
生徒たちの国籍は、およそ70カ国。全体のうち米国パスポートを持っている米国人が約60%。シンガポール人も5〜6%、最近は韓国人が増えているようで同じ程度の5〜6%を占め、日本人も3〜4%在籍しているようだ。校舎内にはいかにもアメリカらしいキャンティーン(食堂)があり、また敷地内にはアメリカン・フットボール場、野球場(まったく野球に対する興味がない当地では極めて珍しい)、サッカー場などが完備されている。創立はシンガポール独立直前の1956年だから、来年で60周年を迎えることになる。
先日、高校で日本語学習者のうち7人がナショナル・オナー・ソサエティ(NHS)への入会が認められたという知らせを受け、そのセレモニーに出席してきた。
シンガポール・アメリカン・スクールは幼稚園から高校まで4000人の生徒が通う巨大なキャンパスだ
アメリカで子どもを高校に通わせていると、語学のみならず、数学や英語など各教科に加えて、奉仕のクラスでの成績優秀者が入会できるNHSがあるのはご存知と思う。
全教科平均でGPA3・0(4・0満点)を取得し、さらに特定の教科で3・5をとった生徒のみに入会が許される。与えられる機会は均等でも、出来る生徒にはどんどん先に進ませて評価するAP(アドバンス・プレイスメント)と同様、NHSは大学進学の際には優位に評価されるという。
アメリカにおける日本語のNHSは、コロラド州立大学ボルダー校に事務局がある全米日本語教育学会(AATJ)がその認定団体となっている。聞くと、今年は全米から28州、151校の2180人の生徒にJNHSへの入会が許されたという。
その中の7人に、今回シンガポール・アメリカン・スクールの高校生が選ばれたのである。海外に数多くあるアメリカン・スクールのなかでも、初めてのケースであり、より日本語をしゃべる環境にあると思われる東京のアメリカン・スクールでもJNHSには未入会のようだから、これはまったくの快挙である。
せっかくシンガポール在住なのだからと、中国語を選択する生徒が多いアメリカン・スクールで、日本語を選んでくれた優秀な生徒たちは、将来どの地に暮らしても、必ずやリーダー的存在になるものと、私の期待は高いのである。
この日は、全米の日本語学習者のなかでも優秀者のみが入会できる「オーナー・ソサエティ」入会のお祝いが高校で開催された
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