映画「君の名は。」の新海誠監督:LAで本作への思い語る
ロサンゼルスを訪れた新海誠監督。後方のポスターには監督のサインが書かれている【写真=吉田純子】
「人はどうして出会ったのだろう。どうして好きになったのだろう。その理由は、忘れていただけかも知れない―」。今年8月26日に封切られて以来、日本だけでなく、中国、香港、台湾、タイなど世界各地で公開されヒット作となったアニメ映画「君の名は。」。本作を手掛けた新海誠監督が5日、ロサンゼルスを訪れ、まだ会ったことのない主人公の2人が時空を超えて出会う物語の制作に至るまでの経緯や、同作への思いなどについて語った。【吉田純子】
日本の和歌や昔話を読んで映画作りのヒントを探すという新海監督。ある時、古今和歌集をめくっていた際、小野小町の和歌が目に留まった。
「思ひつつぬればや人の見えつらん夢と知りせばさめざらましを(夢の中で愛しい人を見た。夢と知っていたならば、もう少し夢を見ていたかったのに)」。この和歌にインスピレーションを受けたのが本作を作るきっかけとなった。
主人公の瀧(左)と三葉。2人はある日夢の中で心と体が入れ替わる(Funimation Films)
千年に1度となる彗星の来訪を1カ月後に控えた日本。東京で暮らす男子高校生の瀧と、田舎で暮らす女子高校生の三葉。見ず知らずの2人はある日、夢の中で心と体が入れ替わる。2人の切ない恋を描いた本作は、日本国内の興行収入が200億円を超え、歴代1位の宮崎駿監督の作品「千と千尋の神隠し」(2001年・興行収入308億円)に次いで歴代2位となった。
「まだ会ったことのない少年と少女が、映画の最後に出会うという設定の映画を作りたかった。人は『どうして出会ったのだろう』『どうして好きになったのだろう』と思う。でもその理由は忘れていただけかも知れないのです」
本作を作るにあたってまず観客に笑ってもらえるコメディの要素を取り入れたかったと新海監督は語る。そしてラブロマンスをまっすぐに観客に伝え、簡単に予想できない内容にしたかったという。
発想の原点となった和歌のほか、本作では日本ならではの要素が随所で登場する。そのひとつとなるのが組紐だ。三葉は組紐を使って髪を結い、後半では組紐が2人を結びつけるシンボルとなる。「日本に古くから伝わる運命の人と人をつなげる『赤い糸』から連想し、2人のシンボルとして組紐を出しました」
そして主人公の瀧と三葉が出会うのは黄昏時。ここにもこだわりがあった。「黄昏時は昼でも夜でもない時間で、死者と会う時間でもあります。違う時空に住んでいる2人だからこそ黄昏時に会わせようと思ったのです」と新海監督は語る。
彗星が災害をもたらすというストーリーだが、この発想のもとになったのは2011年の東日本大震災だった。「震災は千年に1度の周期性の地震でした。自然災害によって住んでいる場所がなくなってしまうというのをフィクションの中に取り入れたのです」
10代の観客にも飽きさせないストーリーにしたかったと話す新海監督は、過去の作品と比べ、テンポの早い作品に仕上げた。「最近はスマートフォンを見ながら映画をみる若者も多い。だからたくさんの情報を与えて、スマートフォンを見る余裕を与えないくらい観客に映画に没頭してもらえる作品に仕上げたかったのです」と本作への思いを語った。
映画「君の名は。」の一場面(Funimation Films)
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