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Writer's pictureRafu Shimpo

春、根を下に広く

 桜の季節に合うピアスをつくってみた。パーツはピンクのビーズやクリスタル。シンプルだけど華やかさもある。なかなか上出来で、会社に行くとき気分が上がる。職場の女性たちにもプレゼントしたら、売ってみたら? とすすめられた。  ちょっと市場を調べてみて感じたのは…すでに「飽和状態」。考えることは皆同じなのだろう。日本には手作りアクセサリーを販売している人はたくさんいる。パーツ屋も充実。誰もが簡単に売買できるアプリも複数ある。相当なオリジナリティーがないと、利益を出すのはちょっと難しそう。  最近、似たようなニュースを耳にする。例えばメッセージアプリ。日本の大手通信会社3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)が「LINE」に対抗する新たな無料メッセージアプリを共同で運営すると発表した。年配層をターゲットにしたり、ビジネス用に使いやすくしたりと、多少の違いはあるようだ。しかし、おもなサービスは大して変わらない印象。「だったらLINEで十分」と思ってしまいそう。  人口約1億3千万人の狭い「日本の日本語マーケット」の中でなんとか差別化をはかり、限られたパイを奪い合う。ファッション、雑誌、ニュースまとめサイト…なんでも。そんな構造があちこちにある。日本の家電メーカーがニッチな世界に入り、国際競争から取り残されてしまうのも同じ流れの話だろう。  身近な話題だと、日本の大手メディアの国際発信にも同じ傾向を感じる。日本にいる記者や海外駐在の特派員が取材するものは、まず日本人に向けて日本語で出稿される。どんなに細かい取材網で、優秀な人材が、海外メディアよりも早くいいネタを手に入れても、外国語で伝えることは二の次で重要視されない。スピードは遅く、そもそも世界のマーケットで競い合うことは求められていない。  私はむしろ外へ外へと目を向けてみようと思う。ちょうどカナダ人の同僚が海外にピアスを販売するいいサイトも紹介してくれた。そして、特に特派員たちが取材するホットだと思える話題は、早く積極的に英語にしていきたい。世界の反響の大きさをまず実感してもらうために。【中西奈緒】

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