歌は世につれ
師走らしく気軽な話題で。 日本の歌謡曲を日本語TVで聞き流していると歌の題名や歌詞がなかなか面白い。 永六輔といずみたくによる「女ひとり」は永の京都と着物文化の蘊蓄(うんちく)を織り込んだ歌詞に優美な日本情緒の味わいがあり、曲もいい。京都大原三千院、恋に疲れた女がひとり…と始まる。清楚な美人が恋にやつれて一人癒しの京都をさまよう情景が浮かぶ。勝手に浮かぶのである。だがこの歌は女だから成り立つ。男だったらどうか。恋に疲れた男がひとりなら、恋に疲れただ? ふざけるな、知るか、この女たらしめ、となる。勝手になる。歌にならないのである。 60年近く昔だが「西銀座駅前」という歌が流行った。西銀座に地下鉄、デパート、映画館、高速道路などが新しく出来て人が集まる人気区域となったので駅前でも流行感ある題名となった。 歌詞は「ABC、XYZ」で始まり、終りは「いかすじゃないか西銀座駅前」となる。いかすも古い流行語だが、駅前がしゃれた題名になり得た。今では新橋駅前とか田畑駅前というのと同じで別に流行感なく歌の題名にならない。歌は世につれ世は歌につれというが全くだ。 以前、僕が米国人の友人の前で日本にこんな歌があるよとこの出だしを口ずさんだことがあった。友人はそれを聞き笑いが止まらなくなった。よく考えたら笑う訳が分ったのだ。日本人はABCとか英語はしゃれた歌詞になると思ったのだろうが英語では単に「あいうえお、はひふへほ」や「いろはにほへと」と同じで意味ない馬鹿っぽく滑稽な歌詞に響いたらしい。日本人の潜在的な欧米への憧れが生んだ歌詞だったのかな。 最近「人生一勝二敗」という歌を聞いた。勝ち続ける人生はない、負けて覚える事もある、そうさ人生一勝二敗でちょうどいい、といった内容。なるほど人生、別に勝ち越さなくてもいいじゃないか、勝ちや成功にこだわるな、一つ輝けたら誇りにして生きよう、そんな感じかな。これを聞いて励みや慰めになる人もいそうだ。主に熟年かな。しかし若者には勝ち越しを目指してガンバレ、八勝七敗程度でいいからくらい言わないと。スポーツ選手なら全勝を目指せ、結果を超えて上に進め、これがいいだろう。まだたくさんあるがちょうど紙面いっぱいです。皆さんよいお年を。【半田俊夫】
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